新年早々、クソみたいな広告コピーについて語ろう:失業中コピーライター(55歳)の告白

このコラムの著者、マーク・ダフィ(55)は、広告業界辛口ブログ「コピーランター(コピーをわめき散らす人)」の運営人。米BuzzFeedで広告批評コラムを担当していた業界通コピーライターだが、2013年に解雇を通達された。趣味のホッケーは結構うまい。

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良い広告コピーを書くのは、まったく難しくない。素晴らしい広告コピーを書くのは難しい。ただ良い広告コピーを書くだけなら、良いライターである必要もない(例:私)。良い耳をもち、頭のなかにビジュアルのアイデアがあふれていて、常識があれば良い。それだけだ。

そんなことから、ひどい広告に出会ったとき、私は本当に混乱してしまう。「クリエイティブなプロセス」のなかで、クライアントがよく、訓練を受けているコピーライターたちよりも、予算を払っている自分たちの方が良いコピーが書けると勘違いし、ヘッドラインやコピーを「微調整」することがあるのは、私もわかっている。そんなとき、たいてい結果は散々なものだ。しかし、悪い広告というのはクライアントのせいではない場合の方が、実は多い。

(何か適当なつなぎの話を頭のなかで補完して頂きたい)。さて、というわけで馬鹿馬鹿しいといえば、最近もまた馬鹿馬鹿しいコピーライティングの好例がたくさん見つかったのでいくつか例を示しておきたい。

プジョー(Peugot):「スイマー」

「新型208に乗っていると、まるで…泳いでいるかのように感じる…エラ呼吸ができるかのように…一度息を吸い込むだけで失われた都アトランティスまで潜っていけるかのように」

えーと、何の話してるんだ? プジョーの新型は水陸両用ってことかな。エージェンシー:BETC、サンパウロ。

アバクロンビー&フィッチ:ティーザー・ビルボード

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ビジュアルは新CEOが尻を出しているのにして欲しかった。Photos via Daily Billboard Blog

「人々は我々について言いたいことがたくさんある。アバクロを全部分かったつもりでいるんだ」

アバクロのソフトポルノ広告をミレニアル世代が拒否してから、タイムズスクエアやロサンゼルスに登場したのが、このビルボード。この秋にアバクロは新しく生まれ変わったということを伝えたかったようだ。まるで顔を真っ赤にしたマーケティング役員がいきり立って発言した言葉が、エージェンシーの担当者によってそのまま書き留められて、それがプレゼンに入れられ、プレゼンを見たマーケティング役員が承認した、という様子が想像できる。

ここまでリテイラー自身を本当に頭が悪いブランドに見せてしまったビルボードは見たことがない(あ、ひとつあった)。

マスターカード(Mastercard):「プライスレス®の音」

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2016年、シカゴ・カブズは108年ぶりにワールドシリーズで優勝した。熱狂するファンの姿をテレビで見た、野球のルールも知らないようなマスターカードの役員が「どうやってこいつらを『プライスレス』キャンペーンに利用できるかな」と考えた結果が、このポスターだ。

プライスレス®の音。
それは熱狂。
それは測ることができない。
それは愛の音。
そして忠誠心、
そして何年にも渡る切望が叶った瞬間の音。
世界にひとつだけの音だ。
カブズファンなら誰でも分かるはず。
それは躍動にあふれる雄叫び。

ここまで無理やりに「プライスレス」を使ったのもすごいが、コピーにまで挿入された®が、もはやあらゆる感動や興味を破壊してくれる。「ダサすぎるで賞」をこの®に贈りたい。エージェンシー:マッキャン XBC(McCann XBC)、アメリカ。

アルマーニ・コード・プロヒューモ

クリス・パインを段ボールの切り抜きで作った人形で置き換えても誰も気づかないんじゃないかっていうくらい、この映像に写る人間は皆、魂が抜けたかのようだ。でもこの味気ない魅力のない個性もない平凡な香水のCMにはちょうど合ってるのかもしれない。クリス・パインの「何か聴こえた?」というセリフは『爆発するくらい』セクシーという売り込みのようだけど、爆発してるのはCMのギャラで膨らんだ、クリス・パインの財布だろう。

ハーゲンダッツ(Häagen-Dazs):「アー(äah)」

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「ビッグ・アップルは、本物のストロベリーに出会った」というタグラインは良い。素晴らしいとまでは言わないけど、まぁそれは良いとする。右側のNYの地下鉄に貼られたポスターの文章を読んでみて欲しい。人手が足りなかったんだろう。ミシシッピの小学3年生にでも外注したに違いない。

ニューヨーク、
君にはその価値がある
君はたくさん働いて
たくさん遊び
歩くのが早く
いつだって返事は「イエス」
「ノー」とは絶対言わない
やる気にあふれていて
新しい物を生み出す
君には夢がある。
君にはこの価値がある
ニューヨーク

エージェンシーはJWT NYC。

クアーズ・バンケット・ビール:「握手」

「このビールはじっとあなたを見つめて、握手をしてくる」

10年に渡り、俳優サム・エリオットがクアーズの声を担当してきた。今回のラインを聞いたとき、エリオットが録音ブースのなかでしかめっ面をして「なんだこのラインは!」と怒鳴っているのが想像できた。ビールは物なんだから握手なんてしないと怒鳴り散らしたあとに、ギャラを思い出して、しっかりと録音を終わらせたんだろうと、私は妄想しておく。

スペース・フロリダ:「バケーショノート」

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最後に紹介するこれは、クソみたいなコピー、というわけではない。しかし、このコピーとビジュアルは、フロリダ観光の広告には使われるべきではなかった。「昇っていくものは全部 ここフロリダに降りて(落ちて)くる。――宇宙をあなたのバケーションの一部にしよう」というコピー。エージェンシーはパラダイズ・アドバタイジング(Paradise Advertising)

【 マーク・ダフィ氏の連載<記事一覧>はこちら

Mark Duffy(原文 / 訳:塚本 紺)