チャットボット帝国を目指す オグルヴィ・アンド・メイザー

さまざまなブランドがチャットボットに関心を持っている。マイクロソフトや食品デリバリーサービスのジャスト・イート(Just Eat)、KLMオランダ航空(KLM Royal Dutch Airlines)は、いずれもボットの小手調べをしている。そうしたなかで、広告会社グループのオグルヴィ・アンド・メイザー(Ogilvy & Mather Group)は、ロンドン本社で専門的なワークショップを設けて、ボットに本格的に取り組んでいる。

人材も顧客も集まる

エクスペリエンス担当ディレクターのウィル・ゴッドフリー氏とイノベーション・プランニング・パートナーのジェームズ・ワットリー氏が主導する「ボット・バイ・オグルヴィ(Bots by Ogilvy)」は、コピーライターやユーザーエクスペリエンス(UX)の専門家など、グループ内の人材を引き寄せる空間となっている。ボットメーカーのチャットフューエル(ChatFuel)やIBM(オグルヴィの顧客でもある)、Facebookからアクセスしてきた外部の協力者もいる。

チームはこれまでに、5つ星ホテルのモンドリアン・ロンドン(Mondrian London)や、イングランド公衆衛生局の禁煙キャンペーン「ストップトーバー(Stoptober)」向けにチャットボットを開発。2016年には、英航空会社ブリティッシュ・エアウェイズ(British Airways)向けのものなど、新たに3つのボットが登場し、2017年にはさらに12のボットが加わる予定だ。FTSE 500(ロンドン証券市場時価総額上位500社)に名を連ねる新規顧客のある企業は、チャットボット製品スイートをリリースできるように、オグルヴィの非公式なボットスタジオにチームを立ち上げる計画を立てている。

オンデマンドの顧客サービスに期待が寄せられるなかで、チャットボットは流行となっており、Facebookだけで3万以上のチャットボットがある。メッセージングプラットフォームが新しいインターネットだとすれば、チャットボットはそのウェブサイトにあたるだろう。

アプリよりも安上がり

「8年前には『アプリを用意するべきだろうか?』と顧客が質問していたが、いまは最高経営責任者(CEO)が株主に対して、チャットボットがあると言いたがる」と、グループ内広告会社オグルヴィ・ワン(OgilvyOne)のCEO、ジョー・クームス氏は語る。

業界が新しすぎて、価格についてはコンセンサスが得られていないが、各ブランドは、前もって開発されたボットを得るためなら、4桁か5桁の金額を支払うと見られる。大手ブランドが6桁以上の費用を負担することもよくあるアプリと比べれば、はるかに安上がりだ。

さらに、アプリの場合は最新のOSに遅れを取らないようにする必要があるが、チャットボットは維持費も安い。いったん稼働させたら、最新の状態を保つのは、技術部門ではなくUXチームやコピーライターの仕事となる。

長期的な視点は必要

だが、役に立たないチャットボットを開発するのは意味がない。クームス氏とチームからすれば、ボットは、売上高やテーマに関する専門知識、サポート、コンテンツのサブスクリプション、経験に関係なく、ブランドが抱えるビジネス上の問題を解決し、長期的に役立つ可能性があるべきなのだ。

「まず、顧客と会話をはじめて、現状やいま携わっている技術を調べ、我々がその場にいるのが適切かどうかを判断する」と、クームス氏は述べる。

禁煙キャンペーン「ストップトーバー」のボットの場合、顧客の意見は驚くほど感情的だったという。自分が弱っているときにログオンした者は、サービスがどんな形で役立ったかを大げさにまくし立てた。助言やゲームを提供してもらったおかげで、むずむずする親指を忙しくさせておくことができたというのだ。アプリで礼を言ってくる者もいた。

こうしたやりとりからブランドが収集できるデータは、ウェブやコールセンターのログを通じて収集したデータよりもレベルが高い。たとえば、レストランの予約用に開発されたモンドリアン・ロンドンのチャットボットには、タオルを身体に巻いただけの姿で部屋から閉め出された客から、助けを求めるメッセージが寄せられた。チームはその後、チャットボットを調整して、ホテルの案内係にこうした問い合わせをする方法について指示を与えられるようにした。

来年はさらに需要高

既存のキャンペーンに追加してこの機能を試した企業顧客もあれば、モンドリアン・ロンドンのように、もっと長い目で見ている企業顧客もある。FTSE 500に選ばれたある新規顧客は、現在は極秘の長期プロジェクトを開始しつつあり、現在は「ボットルーム」として知られるスペースで、もっと正規の活動を行う予定だ。

「来年のいま頃は、同じ会話をしていても、話題が『アレクサ(Alexa)』や『グーグル・ホーム(Google Home)』になっているだろう。この仕事は、終わってからが本当のスタートだ」と、ワットリー氏は言う。

クームス氏は、ほかのエージェンシーもすぐに後に続くと予測している。「2017年には、大々的な巻き返しがあり、エージェンシーが人材捜しや雇用を行っているだろう」。

Grace Caffyn(原文 / 訳:ガリレオ)