疲れ知らずのロボットプランナー「アルバート」が稼働開始:初のメディアプランニング/バイイングAI

米食品企業のドール(Dole)は、アジアで「シーズンズ」という缶詰フルーツを販売している。シーズンズは2種類のサイズで販売されているが、ドールとしてはよりマージンの大きい、小さいサイズのセールスを伸ばしたいと考えていた。

そこで登場したのが、人工知能開発企業アドゴリズムズ(Adgorithms)によって作られたAI、アルバート(Albert)だ。アドゴリズムズはデジタルメディアにおけるプランニングとバイイングの仕組みを一新したいと考えている。

ドールは、このAI・アルバートをディスプレイ・バナー・Facebookの画像・動画広告を含む、デジタルキャンペーン全体に使用した。クリエイティブはフィリピンの首都マニラでローカルに作られたが、アルバートがすべてのバイイング、最適化、そしてプレイスメントを処理したのだ。そう考えるとプログラマティックは、ロボットによる広告処理の「はじめの一歩」にすぎなかったのかもしれない。

AIは、いまやマーケティング業界のトレンドワードだ。Googleのディープマインドにはじまり、IBMのワトソンまで、テクノロジーはすでに市場に提供されている。しかし、広告塔としての存在を越えた範囲でのマーケティング利用は、まだ新しい。

既存のAI活用事例

ちなみにAIの応用範囲は、すでに広い。アンダーアーマー(Under Armour)は、IBMのワトソンを使って、彼らのウェアラブルプロダクト「ヘルスボックス(HealthBox)」を盛り上げようとした。ユーザーがヘルスデータをヘルスボックスに入力することで、ワトソンがそれをもとに個人に最適化したオススメを提案してくれるのだ。

リテール業界では、メイシーズ(Macy’s)がワトソンを使って、顧客の質問にアプリ内で回答させている。コサベラ(Cosabella)はリテールのデータをAIプラットフォームに渡すことでeメールの内容を調整させている。また、どこを経由してたどり着いたかによって、Webサイトのレイアウトを変えることも行っている。

チャットボットが爆発的に普及しはじめたことで、マシーンラーニングへの興味もさらに高まった。少し遊び心を持った使い方としてはマッキャン・ジャパンはAIに「クリエイティブ」の仕事をやらせている

しかし、メディアバイイングを行うAIとしては、アルバートは間違いなく最初の世代だろう。どのようにアルバートはバイイングを行ったのか。

アルバートの仕事ぶり

まず、ドールはブランド特有のベンチマークにそって、KPIを設定。今回はFacebookページに対する3万回の「いいね!」だった。さらに同社はアルバートに対して、どのチャンネルとデバイスをターゲットにするかを伝えた。

初期設定が終わるとアルバートの本領が発揮される。まず、どのようなフォーマットで、いつ、どのメディアに投資するかを決定。ブランド予算を、どこへどう費やすか決めるということだ。リアルタイムでクリエイティブとヘッドラインの正しい割合を導き出すことができた。

キャンペーンが開始されると、ページに対する「いいね!」1回あたりの平均コストパフォーマンスが、とある都市で18%も良いことをアルバートは発見。それはマニラ周辺の大都市地域だ。そしてすぐにその地域にリソースを注ぐことに決定した。

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クリエイティブのためのアルバート・ダッシュボード

それだけではない。ドールのFacebook上におけるエンゲージメント率はモバイルの方がデスクトップよりも40%高かった。そこで、アルバートは予算をモバイルへとシフトさせた。

AIに秘められた可能性

ドール・アジアのマーケティング・イノベーション部門バイスプレジデントであるアシュヴィン・サブラマンヤム氏は、アルバートにメディアの将来を見出している。件のシーズンズ・ブランドは前年と比べて、売上が87%も上昇しているという。「アルバートは疲れることを知らない。また常に学習しているエンジンだ」と、サブラマンヤム氏。

アドゴリズムズのCEOであるオル・シャーニ氏によると、アルバートを使うことでデータの多くをアルバートに引き渡すことになるものの、決して中身の見えない「ブラックボックス」的なオペレーションではないとのことだ。それぞれのアクションの背後にある理由は見えるようになっている。

たとえばアルバートは人間のスタッフに対して、即座に行えるアクションを勧めてくる。エンゲージメント率がもっとも低いのが週末であることを発見したため、土曜日と日曜日のための特別なポストを作ることをクリエイティブに提案した。広告ではなく、Facebookのプロフィールページといった、いわゆる「オーガニックな」ページにおける動画が、165%もエンゲージメントが高かったため、動画投稿を増やすことも提案したという。

サブラマンヤム氏は言う。「(アルバートの活躍)は人々をものすごく焦らせるだろう。メディアエージェンシーを切り裂いていくはずだ」。

Shareen Pathak(原文 / 訳:塚本 紺)