広告会社の報酬システム、透明性へのニーズで多様化:いかに大型案件を獲得するか?

隠れたメディア手数料やキャンペーン成果の低さなどに嫌気がさしたブランドは、マーケターの取引により透明性を求めるようになった。エージェンシーもクライアントへの請求方法を調整しつつある。手数料ベースの手法からレベニューシェアリング、もしくはパフォーマンスベースのモデルへと移行しているようだ。

WPPに部分所有されているエージェンシー、シジジー(Syzygy)のマネージングパートナーであるメーガン・ハリス氏は、「クライアントはますます透明性を求めるようになり、コストモデルが変わりつつある。メディアのパーセンテージベースよりもパフォーマンスベース、もしくはレベニューシェアリングを求めるブランドはどんどん増えてきている」と語る。

メディアエージェンシー、クリエイティブエージェンシーともに、ほとんどが手数料ベースでサービスを提供している。ひとつの案件にどれだけの人材が必要となるかを決め、そこからリテールコスト(給与+経費+マージンを合計したもの)としてクライアントに請求するのだ。典型的なマージンは20%ほど。しかし、マージンを大幅に下げるようクライアントが交渉したり、クライアント側で決まっているエージェンシーマージンを要求してくることも多い。エージェンシー、ディープ・フォーカス(Deep Focus)の創設者で会長のイアン・シェイファー氏は、こういった要求は受け入れられないと話す。

技術発達で報酬システムが多様化

しかし、メディアエージェンシーのなかには、一定の手数料を請求するという枠組みを越えて、多様な報酬システムを試みているところもある。シジジーはクライアントに企画提案をする際、レベニューシェアリングを支払いオプションとしてキープしている。同社が大手レンタカー企業のデジタルメディア戦略とクリエイティブ部門の案件を勝ち取ったとき、レベニューシェアリングが採用された。それによって、クライアント側に発生する収益を一定のパーセンテージ得るという仕組みになったわけだが、これは同時に契約が開始されて3〜4カ月経たないと、収益が何も生まれない可能性もある。

現在、シジジーは同じレンタカーブランドとの案件で、パフォーマンスベースの支払いモデルを試験的に運用している。クライアントが車の貸出数といった重要なパフォーマンス指数を設定し、目標数を達成した場合にエージェンシーへ支払いが行われるという仕組みだ。

エージェンシーは何十年も新しい報酬モデルを探してきたが、テクノロジーの発展のおかげで、いくつかは現実的なオプションとなりつつある。「いまは、ブランドもテクノロジーやデジタルに関する知識をもっており、新しい支払いモデルについて知りたいとよく言われる。プロジェクトの成功・失敗が、エージェンシーにとっても死活問題となるようなシステムを求めている」と、ハリス氏はいう。

ブランドはレベニューシェアを好む

オムニコム(Omnicom)の新しいメディアエージェンシーであるハーツ・アンド・サイエンス(Hearts and Science)はAT&Tのメディア案件を今年8月に獲得。ハーツ・アンド・サイエンスのデータを基盤とした企画提案は多くのクライアントにとって魅力的だ。しかし、彼らがレベニューシェアリングでの契約というリスクを取ったことも案件獲得の大きな要因だったのではないかと多くの人は信じている。この記事の公開前にはハーツ・アンド・サイエンスからコメントを得ることはできなかった。

「メディアエージェンシーによるレベニューシェアリングは交渉における最後の手段、もしくは大きなビジネス案件を獲得するために必要な手段となるのかもしれない。エージェンシーがコントロールできない部分が非常に大きいため、エージェンシーには好まれてないことは確かだ」とシェイファー氏は語った。

これまで、クライアントは新しい支払いモデルには意欲的ではなかった。というのも売上の伸びとマーケティングの相関関係はあくまでも推測に過ぎなく、科学的に立証されているようなものではなかったからだ。しかし、データ分野の発展のおかげで、エージェンシーは値段設定をより柔軟にできるようになった。それによりレベニューシェアリングが可能になったのだと、デジタル・エージェンシーであるヒーローグループ(Hero Group)の創設者、ジョセフ・アンソニー氏はいう。

全国的なマーケティングよりも、ローカルな営業の方が収益に貢献していると考えるエグゼクティブも、会社によっては何人も存在している。しかし、データ中心のターゲティングツールやアクイジション(獲得)ベースのデジタルマーケティングが登場してきたおかげで、プロジェクトが成功するかどうか、より正確に予測できるようになった。これによって、クライアントにとってもエージェンシーにとっても、インセンティブやパフォーマンスをベースにした支払いモデルが、より信頼性をもつようになった」と、アンソニー氏はいう。

マージンの引き上げは以前厳しい

アイソバー(Isobar)のバイスプレジデント、デイブ・ミーカー氏は、アクセンチュアやデロイトといったコンサルティング会社もまた、エージェンシーの料金モデルに影響を与えているという。コンサル企業がデジタルマーケティング案件を請け負うとき、すでに大規模なプロジェクトをそのブランドと契約していることが多い。そのため全社的にバランスを取る形で、デジタルマーケティング案件に対して少ないマージンを提案することができるのだ。

「エージェンシーは値段では負けてしまうかもしれない。一方で、彼らのもつより広いマーケティング能力を活かすため、エージェンシーは全体としてパフォーマンスベースの方向に進みつつある」とミーカー氏。

新しい料金モデルを採用することで、エージェンシーが今後クライアントを獲得できるかどうかに関わらず、彼らのマージンは低いまま留まるだろう。「『利益を上げる』ことすらエージェンシーにとってはタブーな世界になった。株式を一般公開しているような会社にとってはあらゆるオプションも探るしかないようだ」と、シェイファー氏は語った。

Yuyu Chen(原文 / 訳:塚本 紺)
Image via Thinkstock / Getty Images