「成功するために一番大事なのは、立ち直る力だ」:マッキャン・ワールドグループ会長・CEO ハリス・ダイアモンド氏

ハリス・ダイアモンド氏はPR・広告業界に入る前、ビジネスと政治の世界で8年間の経験を積んだ。彼のビジネスの理解の深さは突出している。マッキャン・ワールドグループの会長兼CEOである彼は、2012年後半に組織に加わって以来、グループをさらなる高みへと昇華させてきた。その仕事にはコカ・コーラやロレアル、ジェネラルミルズ、ゼネラルモーターズ、マスターカード、マイクロソフト、そしてネスレといった巨大なグローバルブランドが名を連ねている。今回は同氏自身の言葉で、この業界に加わった経緯について説明してもらった。そして、そのプロセスにおいて学んだ、もっとも大きな教訓についても聞くことができた。

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私はブルックリン育ちだ。子どもの頃は自分が広告業界で働くことになるとは、まったく考えたことも無かった。ニュージャージーにあるドリュー大学という小さな学校で政治学を学んだ。ブルックリン出身の青年からすると、それはまったく新しい世界だった。ニューヨーク市という環境で育ったため、違う環境で育った人間たちと同じ学校に行くということが、まず素晴らしい経験だった。また時代も多くの変化を起こした、面白い時代だった。

卒業に差し掛かり、私は何がしたいかよく分かっていなかった。そこで内定をもらった一番最初の仕事に就くことにしたのだ。それはプルデンシャルという保険会社だった。会計監査部門で働くことになったのだが、当時の私は数学なんてものは、まったくもって門外漢だったことを考えると、これは実に皮肉なことだと思う。そこから、さまざまな異なる役職につき、最終的には会社の副会長のアシスタントになっていた。

アイデアを捨てるということ

幹部クラスでの決定プロセスというのを目の当たりにすることができ、私は実に多くを学んだ。ひとつ絶対に忘れないエピソードがある。自分が運営担当になっていたカンファレンスのために文章を作成し、会社に15人いるバイス・プレジデントに送信したんだけれど、15人のうち14人の名前のスペルを間違っていた。私の直属の上司であるシニア・バイス・プレジデントが電話をかけてきて、「お前は頭が悪いのか、それともグズなのか」と言ったんだ。どっちに回答しても良い結果は生まれないって、すぐに気づいたね。

それから私は法科大学院に行くことを決めたんだ。地元の政治に関わりはじめたのはその頃だ。リズ・ホルツマン氏のキャンペーンを運営することになった。のちのブルックリン地方検事だ。キャンペーンで学んだことは、水曜日なんて存在しないってことだ(※編集部註:アメリカの選挙投票は基本火曜日に実施される)。最終的には選挙があり、投票が行われ、誰かが勝って誰かが負ける。

良いアイデアがあったとしても、そしてそれがどれほど良いアイデアだったとしても、それが機能しなければ、意味は無い。そんなときには、そのアイデアを捨てることができないといけない。これは、もしかしたら自分にとって一番の教訓で、人格形成にも大きく影響を与えたものかもしれない。これはキャリアを培っていくうえでも非常に支えになった教訓だ。そして気がついたら企業のPR部門で働いていたんだ。

必要なのは立ち直る力

このビジネスにおける最大の喜びは人にある。ボゼル(Bozell)の会長であるチャック・ピーブラー氏は、ほかの誰よりもビジネスについて深く教えてくれた。人を信頼し、信じて、チャンスを与えることについて教えてくれた。ロブ・ライリー氏からも教わった。彼には格言がある。「素晴らしい人材を雇って、彼らの邪魔にならないようにしろ」というものだ。これは、いまでも信じている信念だ。偉大な人間に囲まれていれば、自分もより良い人間になれる。

2000年の経済メルトダウンのあと、9・11の惨劇のあとにも働き続けないといけなかった。あのときは難しく辛い判断を下さないといけなかった。会社が生き残るためにオフィスをいくつも閉じないといけなかった。そして何人もの良い人材をクビにした。収益という観点から、彼らに給料を払い続けることができなかったんだ。

私たちはサービス産業にいる。クライアントが問題に直面すればそれに対応しなければいけないし、経済に変化が起きればその犠牲にもなる。成功するために必要な一番の要素は立ち直る力だ。このビジネスの人々は打たれ続けながらも前進しないといけない。

また、自分の仕事を心の底から好きでないといけない。厳しいビジネスだ。金曜の夜に恋人に電話して会えないことを伝えないといけないことはザラにある。人々にたくさんの働きを求めるビジネスなんだ。こういった厳しい要求に耐えるには、自分の仕事を心の底から好きでいないと無理だ。キャリアを築くことができて、かつ自分の人生を楽しめているという意味で、私は非常にラッキーだと思う。

Tanya Dua(原文 / 訳:塚本 紺)