「デジタル業界は、戯言を言わないようになってほしい」英エージェンシー上層部 ベン・ウッド氏

米DIGIDAYでは、「トップからの視点」と題して、クリエイティブリーダーたちに、これまでのキャリアやリーダーシップについてインタビューするシリーズを連載している。本記事はそのシリーズの最新記事だーー。

Ben-Wood-President-Global-iProspect-e1404744266784-300x265長くに渡って地元密着型のエージェンシーを経営した後に、世界規模のエージェンシーへ異動したら、慣れるために少し時間が必要だ。

電通イージス・ネットワーク(Dentsu Aegis Network Ltd.)が所有する、イギリスのデジタルエージェンシーであるアイプロスペクト(iProspect)にグローバル・プレジデントとして就任してから3年が経ったベン・ウッド氏(写真右)。以前はイギリス支部のプレジデントだったため、グローバルな部署への異動は大変だったと話している。

世界的な役割に足を踏み入れるのはどんな経験でしたか?

最初にショックを受けたことは海外出張だ。時差ボケ、異国、異文化や違う仕事の仕方だけでなく、それまでとは全然違う生活に慣れなかった。家での自己管理や仕事の仕方など、見直さなくてはならなかった。

一番難しかったことは何でしょう?

ローカル・ビジネスを経営するには自らのすべてを注ぎ込まなければならない。しかし、グローバルな役割になってしまうと、日常の仕事からは遠く離れ、企業が成功するためのグローバルインフラの整備などと関わるようになる。これらはまったく別の仕事だ。最初はすごく戸惑ってしまった。

どんな間違いから学んできましたか?

長いことアイプロスペクトのイギリス支部で働いていたから、イギリス支部に愛着が湧いてしまっているが、彼らには自主性が必要だ。働きはじめた最初の年には、何かと干渉してしまった。人間の性かな。

仕事で学んだ一番大事なことは?

私たちはテクノロジー、データ、メディアやコンテンツが激しくぶつかり合う業界で働いている。だからこそ正しい人材を雇い、教育し、輝ける機会を与えることが重要になってくる。しっかりと部下を育てれば、部下はしっかりとクライアントに対応するようになる。

人材を大切にしていると、全エージェンシーが胸を張れるわけではないが?

人材は信じられないほど大切だということをエージェンシーは理解している。しかし悪いのはビジネスモデルだ。クライアントが支払う費用は安くなってきているが、意見を多く言うようになってきたため、スタッフに対する要求が増えている。これによりエージェンシーが人材に対する投資をしにくくなる。しかし人材に投資しないと、サービスが悪化することとなり、負のスパイラルに陥ってしまう。

エージェンシーの将来のビジネスモデルはどんなものでしょう?

わかりやすい結果が求められ、成果報酬が導入される。多くのクライアントは独自のDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)を所有し、エージェンシーにDMPの可能性を引き出してもらおうとする。私たちはそのデータを所有したいのではなく、クライアントが所有するデータから価値のある情報を抽出する手伝いをしたいのだ。だからこそ私たちはシステムインテグレーターのような役割となり、クライアントに最適なテクノロジーを選ぶ手伝いをする。私たちもやらないと、デロイト(Deloitte)やアクセンチュア(Accenture)はすでにその方向に動いている。

アドブロックに多くの意見はあるが、誰に責任があると思う?

責任はエージェンシーとクライアントにある。問題は戦略にあるのだから、アドテク企業を責めるのはお門違いだ。誰かが3週間前に商品を購入したからといって、45回も広告のターゲットにすることは、まったく意味がない。しかしこれが現実だ。アドフラウドやビューアビリティの問題は、広告主のお金が絡むため、より重要な問題となる。

2016年に業界から追放したいものは?

あまり戯言を言わないようになってもらいたい。この業界は、何かを正当化するように、いつも複雑さを理由にしている。これからはシンプルさを追求すべきだ。また、より多くの差別化を見たい。最近のアドテクは似通っている。もし私がクライアントだとして、世界最大級のデジタルマーケティング・カンファレンスである「ドゥメクスコ(Dmexco)」に出席したとしても、何からはじめれば良いかが分からない。それは問題だ。

2016年に大きく動くものは?

透明性に向けた動きが出てくるだろう。エージェンシーによるデータの使用方法、コマーシャルの構築方法、テクノロジーの選定やその理由、広告は本当に視聴されているのかなどをクライアントは知りたがっている。デジタル業界にも不透明性は蔓延している。

一番イライラすることは何でしょう?

私たちはより、クリックする側のエクスペリエンスの質を考えなくてはならない。私たちは消費者をターゲットしてデジタルエクスペリエンスを届けることは得意だが、多くの場合、それらのエクスペリエンスはあまり良くないか、その消費者にとって関連性の低いものとなっている。コンテンツをもちすぎるのもゴミ同様だ。この業界は科学にばかり注目してしまっているが、アートにも注目すべきだ。

Jessica Davies(原文 / 訳:BIG ROMAN)
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