オフィスレス・女性職員75%、異色エージェンシーの運営術

グッドウェイ・グループ(Goodway Group)の最高執行責任者ジェイ・フリードマン氏は、オフィスに出勤することはほとんどない。それは彼の前職ヤング・アンド・ルビカム(Young and Rubicam)でも同様だった。プログラマティック・メディア・プランニングとバイイングのパートナーとして、さまざまな地域のエージェンシーと仕事をする彼だが、これは業界からすると非常に珍しいことである。

エージェンシーの多くは対面で会議を行うこと、そしてオフィスに出勤することを重視する文化をもっている。一方でグッドウェイはペンシルバニアに本社を構え、400人もの従業員が州外で自宅勤務をしている。フリードマン氏は、そのうちのひとりにすぎない。

「我々が雇いたかった最初の役職はトレーダーだった。ボストンに人材を見つけて、彼女には自宅勤務をさせることにした。それからまた別の人材をオースティンで雇ったんだ。すごく上手く行ったので、実際に顔を突き合わせて働く必要がないことに気づいたんだ」と、フリードマン氏は語る。

独自教育で職員育成

グッドウェイ・グループの従業員たちはダラス、アトランタ、ロサンゼルス、オースティン、そしてフィラデルフィアに集中している。そのうち10%が営業、15%が管理課、そして75%がクライアントを直接サポートする勤務内容になっており、そこにはメディアトレーダー、アカウントマネージャー、キャンペーンコーディネーター、ストラテジスト、そしてメディアプランナーが含まれる。

フリードマン氏によると、採用後最初の6週間はいかなる仕事も行うことはできないという。全員がオンライントレーディングアカデミーの講座を履修することが義務付けられているからだ。その内容は16時間に渡る。その後、6人で構成される社内のトレーニングチームが、営業、マネージメント、トレーディングに関して新規採用者へバーチャルに訓練をする流れとなっている。

「私たちは実際のキャンペーンの運営プロセスを模した形の、独自のトレーニングソフトウェアをもっている。6週間のトレーニングのあと、経験のある従業員とペアを組む。もちろん(新しく入ってきた)メディアトレーダーがいきなりトレーニングのあとに25個の案件を任されるようなことはない」と、フリードマン氏。

女性が75%もいる理由

広告とマーケティング業界は女性の人材採用が遅れていると批判を受けてきた。その観点からすると、グッドウェイの従業員の75%が女性であることは特筆すべき点だ。

フリードマン氏は、これは労働環境の影響であると考えている。責任の配置、そして勤務地が融通が効くことは女性の労働者にとってアピールが強いということだ。とはいっても、「特に性別や、ほかの理由だけに集中して採用するということはしていない」と、同氏は語る。

グッドウェイでは従業員たちはほとんどの勤務時間を自宅勤務で過ごす一方で、1年に2度、ディアバリーとラスベガスで会うことになっている。これはチームワークを向上させるためだ。もちろん、直接会って行った方が効率的な業務はあるものの、オフィスをもたなくて良いという点は、グッドウェイの運営コストを抑えることができる。フリードマン氏によると、そうして節約できた分は従業員やクライアントに返ってくるというわけだ。

レイザーフィッシュの場合

こういった運営システムを行っているのはグッドウェイだけではない。レイザーフィッシュ(Razorfish)やマクサス(Maxus)も限定的だがヴァーチャルな勤務形態を模索している。

レイザーフィッシュの人材戦略グループ・バイス・プレジデントであるリン・フラース氏によると、彼らが抱える1500人の従業員のうち162人が自宅勤務であるという。そのほとんどがeコマース分野を担当しており、システム導入といったクライアントと直接やり取りをする業務には就いていない。一方、クリエイティブエグゼクティブたちはオフィスでチームとして勤務することを好んでいるようだ。

「我々にとって在宅勤務は、人材採用の面から考えられたというよりも、買収プロセスによって発生した問題に対処した結果だ。いくつかのエージェンシーを買収して、そこの従業員たちを買収後もその地域で働けるようにする、ということを行った(結果、自宅勤務が発生している)」と、フラース氏は説明する。

マクサスの場合

マクサスの状況はどうだろうか。まだトレーニングを受けている最中のジュニア職を除いて、アメリカにおける296人の従業員は1カ月に1日、自宅勤務をすることが許されている。これは「責任をもった柔軟性(Flexibility with Accountability)」というプログラムによるものだ。これは従業員の多くが遠隔から働きながらも業務をちゃんと管理できている状態でありたいと希望するからだという。

加えて、親会社のグループM(GroupM)は、エージェンシーの成長に伴いオフィスのスペースも足りなくなってきていると、人事責任者であるクリスティン・ムーニー氏は説明する。しかし、完全に遠隔勤務に移行するのは現時点では実行不可能だという。

「私達のビジネスはクライアントにサービスを提供することだ。マネージャーたちは遠隔勤務に関して懸念をもっている。目の届かないところだと、従業員の生産性が落ちてしまうのではないかという不安があるのだ。そして我々の文化、コラボレーションにも影響があるのではないかという心配もある。私たちにとっては実験のようなものだ」。

Yuyu Chen(原文 / 訳:塚本 紺)
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