元倉庫を改装した、英プロテインのミニマル空間:エージェンシーの「オフィス探訪」

1997年創立の英エージェンシー、プロテイン(Protein)の創設者であるウィル・ロー氏は、自社のマーケティング戦略を「オニオン・ラブ」と表現する。

「ひと皮むくごとに、その先にまだ何かあることに気づく。ここは、ひとつの明確なビジネスで成り立っているわけではない。小さなものの集まりで、それが面白さを保ち続けている」。

プロテインは、ミレニアル世代の消費者調査レポートをひんぱんに提供。ブランド各社が同世代向けキャンペーンを立ち上げる際の手助けとなっていることで有名だ。

プロテインのオフィスは、かつては印刷会社の倉庫スペースだったという。1階はショップとなっており、カフェ「クリーム(C.R.E.A.M)」やイベントスペース、そしてフォトスタジオなどが併設されている。

社員の食事処のC.R.E.A.Mではプロテインのスタッフは割引価格で食事ができる。 カフェ「クリーム(C.R.E.A.M)」は、プロテイン社員なら割引価格で利用できる

上階のプロテインオフィスには、地元企業が利用できるコワーキングスペースも設置。そこで、同社が利用するのは、100席のうちのわずか30席だ。それ以外は、チケット販売サイトのビレット(Billetto)やオンラインドリンクガイドのバーチック(BarChick)などのスタートアップ企業に貸し出している。

「以前のオフィスには、8人で入居したが、退去時には20人になっていた。これが理想的だと思う」と、ロー氏は説明した。

なにも、このビル全体を貸し切る必要はないし、小さな会社にとってそれは大きなコストだ。また、オフィススペースを外部にレンタルするのは、プロテインがカルチャーとクリエイティビティーのハブになるという信念を発信するのに役立っている。

上階にあるプロテインのオフィス。以前は印刷会社だった場所だ。上階にあるプロテインのオフィス、以前は印刷会社だった

これまでの18年間、プロテインのオフィスは、めまぐるしい変化を遂げるイーストロンドンにあった。同エージェンシーが元入居していたヒューイット通りの本拠地を追い出されたのは、3年前。Amazonが15階建てオフィスの構想プランを立てた時だ。

現在の場所では定期的に就業後の飲み会が開催され、チームで夜の街に繰り出す。最近の目玉は年に1度ロンドン、ニューヨーク、アムステルダムそしてベルリンのオフィス社員が集まるミーティングでのラップバトルだ。スタッフはロー氏が選んだ3節の詩と曲のワンコーラスを披露しなければならない決まりとなっている。一番目立っていたのは、社内でもっとも静かな人と呼ばれている、ロンドンのインサイトチームメンバー、ニック氏がスケプタ(Skepta)の「シャットダウン(Shutdown)」を歌ったときだそうだ。

プロテインの上階部にあるオープンキッチン。 プロテインの上階部にあるオープンキッチン

オフィス環境は、いわゆる「クリエイティブさ」はないかもしれないが、社員はいつでもアルコール飲料を手にすることができ、また長いオランダ式のテーブルがオフィスで存在感を出している。建築家と議論し合い、リノベーションの過程で内壁が15枚も撤去された同オフィスには、全社員が協力して作ったピンタレスト(Pinterest)のボードが飾られている。

プロテインではビジネス同様、オフィス空間も常に変化してきた。「プロテインでは学校教育で習ったような概念は役に立たない。ビジネスで競争力をもつための唯一の方法は、向こう3年の計画を立てて、すぐにそれに取り組むこと。その3年間で、我々の計画が正しいということを競争力をもって証明することだ」と、ロー氏は語る。

プロテインの1階にあるミニマリストイベントスペース1階にあるミニマルなイベントスペース

プロテインは会員制のインサイトプラットホーム、OSのローンチを目前に控えている。これは5年前にも挑戦したことがある事業ではあるが、当時は時期尚早だったと、ロー氏は語る。いま契約しているクライアントは、この新しいサービスによってカスタマイズされたリサーチと自身のプランニングツールへのアクセスが可能になる。プロテインが目指すのは、ファッション業界や飲料業界、またテクノロジー業界との関係を構築し、維持し続けることだ。

ロー氏は業務の連絡手段においてメールを使うことはない。4カ月前、メディアの衰退を懸念した彼は自身のGmail受信箱にあった328通の未読メールをすべて削除し、世間では「使いものにならない」といわれている、通話とテキストメッセージのみのベーシックな携帯電話、パンクフォン(Punkt phone)を購入した。それと同時にチームは、コミュニケーションアプリのスラック(Slack)で連絡をとるようになった。

「ある問題が重要かどうかの判断を求めるために、誰かが自分を探しまわったり、または電話やメッセージで判断を仰ぐプロセスをとるなんて信じられないことだ。別に傲慢になっているとか、そのような対応を一切受け付けたくないということではない。私はそれらよりも重要な物事にもっと集中できるようになりたいのだ」。

Grace Caffyn(原文 / 訳:Conyac