インフルエンサー代理業、乱立の裏にひそむダークサイド:契約をめぐる不透明な関係

インフルエンサーの代理業を行うエージェンシー、セレクト・マネジメントグループ(Select Management Group)の共同経営者であるスコット・フィッシャー氏にとって、あるブランドのクライアントが最近メールで知らせてきた内容は、寝耳に水だった。セレクトに所属する大物インフルエンサーのひとりが、インフルエンサーマーケティング技術プラットフォーム3社のプレゼン資料に記載されているというのだ。

「インフルエンサー技術プラットフォームが『利用可能な人物』として、当社のタレントを宣伝に使っている事例が数多く見つかった。だが、それは誤解を招くフレーズだ。彼らは当社と事業契約を結んでいないのだから」と、フィッシャー氏は語る。「我々は、当社のインフルエンサーを削除するよう彼らに要請した」。

ベンダー乱立の問題点

インフルエンサーマーケティングの市場は、今後5年で50~100億ドル規模に成長すると見込まれている。インフルエンサーに対するブランド側の需要増に応えるべく、プラットフォームのベンダーがにわかに乱立し、広告主がクリック数回でソーシャル界のスターたちと接続できる技術を売り込んでいる。

たとえば、そうしたベンダーの1社であるネオリーチ(NeoReach)は、同社サービスを利用すればインフルエンサー300万人以上を検索できると主張している。しかしこれらの企業は、インフルエンサーとの関係性の実態を誇張している可能性がある。というのも、そうしたインフルエンサーの大半に対して、ベンダーは非独占契約で緩やかに代理人業務を務めているだけだからだ。

「この業界では、ほとんど誰も独占契約を結んでいない」と、インフルエンサーマーケティング企業のコレクティブ・バイアス(Collective Bias)でマーケティング・コンテンツ部門シニアバイスプレジデントを務めるホリー・パブリカ氏は明かす。「一部の企業は何百万人ものインフルエンサーを抱えていると言うが、その大半は活発ではない」。

タレントエージェンシーとの違い

パブリカ氏の会社は現在、約8000人のインフルエンサーたちと契約し、「需要と供給のバランスをとっている」という。彼女のチームは、おもに紹介を通してインフルエンサーたちを募集しているが、つねに順番待ちの状態だ(いまのご時世、インフルエンサーになりたくない人などいるだろうか?)。パブリカ氏がタレントエージェンシーと仕事をすることはめったにない。タレントエージェンシーには、大きな分け前をとる傾向があるからだ(ただし、クライアントが求める特定のインフルエンサーが、エージェンシーと独占契約している場合は仕方がない)。コレクティブ・バイアスは、フォロワー数が10万人以下のインフルエンサーに焦点を合わせている。

同社と契約するママブロガー、ステファニー・パス氏(@tiptoefairy)の例を見てみよう。彼女は、インスタグラムに8623人のフォロワーと、Facebookに1万5755人のファンを抱える。そんなパス氏は今年5月、赤ちゃん用ウェットティッシュ「ハギーズ・ワイプス(Huggies Wipes)」を取り上げた長文記事「DIY Sidewalk Foam Paint(歩道に描いて簡単に消せるDIYフォームペイント)」を自身のブログに投稿した。コレクティブ・バイアスによると、この記事はこれまでにFacebookで2320のシェアを、Pinterest(ピンタレスト)で13万5000のピンをそれぞれ獲得しているという。

「タレントエージェンシーは通常、何百万人ものフォロワーがいるセレブ風インフルエンサーの代理人業務を行うが、我々はそれよりも小規模な『パワーミドル』のインフルエンサーたちと仕事をしている」と、パブリカ氏は説明する。「インフルエンサーのフォロワー数が10万人を超えると、パフォーマンスが低下する傾向が強まっていく」。

勝手気ままなインフルエンサー

しかしだからといって、技術プラットフォームがタレントエージェンシーと協業しないわけではない。約300人のインフルエンサーをマネジメントするタレントエージェンシーのバイラルネーション(Viral Nation)は、アイジア(Izea)や、Twitterが所有するニッチ(Niche)など、5つのテクノロジープラットフォームに、同社のインフルエンサーの記載を許可している。同社はこれらの企業に対し、キャンペーンベースで料金を請求しているが、正確な数字は明らかにしていない。

「これほど多くのインフルエンサーの代理人を務めていると、彼らにメディア露出の機会をできるだけ多く与えたいと思うものだ」と、バイラルネーションの共同創設者でマネージングパートナーのジョー・ギャグリース氏は語る。「もちろん、当社の許可を得ていないプラットフォームに対しては、つねに弁護士に書状を送らせ、当社のインフルエンサーを削除するよう要請している」。

インフルエンサーマーケティング技術を手がけるミューズファインド(MuseFind)のジェニファー・リーCEOによれば、前途有望なインフルエンサーの多くはいずれにせよ、自身の枠を広げることに意欲的なため、エージェントの知らないところで独自にプラットフォームを活用しているという。

契約が緩いとプロセスが複雑に

「私が疑問に思うのは、プラットフォームに1対1の関係を築く必要があるのか、ということだ。それはちょうど、誰もがiPhoneを使っているが、ティム・クック氏との個人的な関係は必要ないのと同じだ」とリーCEOは語る。「タレントエージェンシーは手作業のアプローチをとっている。プラットフォームとしての我々の仕事は、そのプロセスとスケールを加速させることだ。自身がB2Bの側にいるならタレントエージェンシーと協働すればいいし、B2Cの側ならプラットフォームと協働すればいい」。

1対1の関係は必要条件ではないかもしれないが、一部のテクノロジープラットフォームが自らを売り込む方法は誤解を招くものだ。一方でエージェンシーは、エージェント経由にせよ直接連絡にせよ、プラットフォームとインフルエンサーのより親密な関係を求めている。エージェンシーのRPAでデジタルストラテジー部門の責任者を務めるマイク・ドセット氏が米DIGIDAYに最近語ってくれたように、「ベンダーとインフルエンサーの契約が緩ければ緩いほど、ブランドにとってプロジェクトのプロセスを把握することが、ますます複雑になる」。もしそうなれば、結果的にアルゴリズム主導のアプローチによって、エージェンシーとブランド、ベンダー、インフルエンサーは途方もない時間を浪費させられることになるかもしれないのだ。

Yuyu Chen (原文 / 訳:ガリレオ)