エージェンシーにとって、Amazonはどんな立ち位置なのか

Amazonの広告ビジネスが勢いを見せるなか、エージェンシー各社はこの世界最大のオンライン小売サイトで、キャンペーンを行う手法を見出しつつある。

eコマース界の巨人Amazonは、FacebookやGoogleのように、ブランド各社へインベントリー(在庫)を売るのではなく、買い物客に商品を売っている。これは細かいようにも思えるが重要な違いだ。広告担当幹部とAmazon代表は、広告コピーやキーワード戦略と同じくらい、サプライチェーンやインベントリーについて話し合っている。デジタルマーケティングエージェンシーの360iで検索マーケティング担当バイスプレジデントを務めるジェイソン・ハートレー氏は、このプロセスが「いままでとは異なっており難しいが、絶対に必要」と語る。

Amazon代表は、エージェンシーに対して前述の違いを明確に説明しており、Amazonが広告主に対する方針を変えるつもりはないという。つまり、エージェンシー側が既存のオンラインキャンペーンのやり方を変える必要があるということだ。ある幹部は匿名を条件に、「いままでのメディアオーナーたちは、メディアの影響を最大化することで利益を上げることに集中してきた。それに対してAmazonは、買い物客のためになる体験を作り出すことを重視している」と明かす。

同幹部によると、このAmazonのショッピング体験に妥協しない姿勢がメディアバイイングを複雑にしている場合があるという。とはいえ、エージェンシーがAmazonの広告で苦戦しているわけではない。それどころか、Amazonはクリエイティブなアイデアを盛り込んだキャンペーンをGoogleやFacebookより受け入れてくれやすいとの声が、各エージェンシーからあがっている。先述の幹部は次のように語った。「Amazonのやり方をきちんと理解していれば、ブランド各社にカスタマイズされたキャンペーンを行うチャンスがあることに気づくだろう。GoogleやFacebookで同様のキャンペーンを行うのは簡単ではない」。

柔軟性の高さが魅力

以前はブランド各社がAmazonの広告を利用するためには、Amazonで商品を販売している必要があった。しかし、ここにきてAmazonは、広告プレースメントおよびターゲットのオプションを増やしており、Amazonで商品を販売していないブランドを含め、Amazonの広告を利用する会社が増えていると、デジタルエージェンシーのアイプロスペクト(iProspect)でPPC(Pay Per Click)マーケティング部長を務めるスコット・アボット氏は指摘する。

Amazonの広告ビジネスがこのような柔軟性を発揮できている理由のひとつに、GoogleやFacebookと比べて広告ビジネスの規模が小さいことがあげられる。市場調査会社のeマーケター(eMarketer)の推定では、2016年のAmazonの広告収益は10億ドル(約1080億円)。同年のGoogleの790億ドル(約8.5兆円)、Facebookの270億ドル(約2.9兆円)と比べれば、はるかに小規模だ。小規模であるがゆえに、Amazon代表はより直接的に個々のエージェンシーと関わることができる。Amazonと仕事をしている幹部たちによれば、Amazonは商品ページを「ブランドのマーケティング媒体」のようにする後押しをしてくれるという。

一般にマーケティング担当が興味を持っているのは、Amazonがファネルの下部でコンバージョン率をどれだけ上げられるかであり、それを実現できる検索広告だ。化粧品大手の英国ロレアル(L’Oréal)のデジタルディレクター、ニック・バックリー氏は、Amazonがインターネットショッピングの入り口として台頭しているのを受け、ブランド検索の予算をAmazonへとシフトしていくと米DIGIDAYに語った。物流大手ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)による2017年第1四半期の調査では、消費者の実に4人に1人以上(29%)が最初にAmazonで商品を検索すると答えており、最初に検索エンジンを利用するのは若干15%にとどまっている。ブランド各社がAmazonでのファネル下部のコンバージョンを気にする一方で、エージェンシーは購買ファネルの上部にもAmazonが目を向けていることに注目している。

効率の良い投資先

ハートレー氏は、最近になってAmazonがブランドのページのコンテンツオプションをさらに改善したのは、同社が「ブランドが喜ぶ形でブランドページでの体験を向上させる取り組み」の一貫だと語る。また、Amazonは有料検索ツールを開発しており、膨大な商品検索から収益をあげることも考えている。

「基本的に、いまのところAmazonは効率の良い投資先という見方が大勢だ」と、アボット氏。しかし、アメリカでAmazonスパーク(Amazon Spark)、Amazonインフルエンサープログラム(Amazon Influencer Program)が開始し、Amazonストアでも新たにブランド専用のページが立ち上げられたことにより、これからはAmazonをブランド構築の場として利用する企業も増えていくだろう、とも述べている。

さらに多くのブランド予算がAmazonへ投入されるまでは、クライアントはAmazonの広告をGoogleの代替ではなく補助として利用するだろうと、エージェンシーは見込んでいる。そのうえで、新規顧客を開拓するために、ブランド各社がGoogleで広告を打ち出して、結果が芳しくない場合は、予算がAmazonへとシフトしていく可能性があると、ハートレー氏は述べる。「データをマルチタッチアトリビューションで統合的に分析しやすくなれば、プラットフォーム間がより流動的に結びついていくことが考えられる」という。

Amazonの立ち位置

360iの行ったキャンペーンでは、多くのブランドでAmazonの検索広告、特にスポンサープロダクトのROI(投資利益率)が従来の検索プログラムよりも高いことがわかっている。とはいえ、AmazonのROIは少し分かりづらい部分もあるとハートレー氏。すなわち広告が直接売上に結びつくこともあるが、こうした売上によって、Amazonのオーガニック検索でより上位になる。このような本物の波及効果が生まれる一方で、その効果を数値化したり特定したりするのは難しい。

エージェンシーにとってのもうひとつの課題は、Amazonの検索広告から発生した売上に必ずかかる手数料が商品カテゴリごとに異なっているため計算が複雑になることだと、エージェンシーのロースト(Roast)でペイドメディア部長を務めるジョン・バーハム氏は述べている。

Amazonがセールスチームを拡大し、エージェンシーもこのプラットフォームで独自の専門性を築いていくにつれ、細かく分かれたサプライチェーンにおける同社の立ち位置が、いまよりはっきりしていくのは遠い未来の話ではないだろう。

Seb Joseph(原文 / 訳:SI Japan)