米「透明性レポート」、なぜ尻すぼみの結果となったのか?:「これは詐欺ではなく共謀だ!」

去る6月7日に発表された、全米広告主協会(Association of National Advertisers:以下、ANA)による「透明性レポート」は、米国メディアにおける広告の売買取引において、リベートやキックバックといった不透明な慣習が「蔓延」していることを明らかにし、多数のメディアで大きな話題となった。内部情報の漏洩は、禁固刑という結果をもたらすのではという憶測もあったほどだ。それだけ、業界を震撼させる爆弾となるはずだった…。

だが、実際は中途半端な結果に終わった。具体的な固有名詞が一切挙げられなかったからだ。怪しげな慣習が匿名で指摘されたが、特定の企業や個人にはまったく結びつけられていない。この「透明性レポート」は結局のところ、それほど透明ではなかったのだ。結果として、「過剰に複雑で効率が悪く、二重取りや二重契約で不明瞭なメディアシステム」を垣間見せただけだった。そして、状況はこれからも変わらない。

ANAのレポートが取り上げた問題の一部は、数年前に米DIGIDAYが繰り返し報じていた。我々がいち早く警鐘を鳴らしたのは、エージェンシーがクライアントの資金を、利益率の高いトレーディングデスク(ベンダーの役割を果たす)に投じることは、明らかな利益相反があるという点だ。また、ベンダーに支払われるマージンの額に基づいて、エージェンシーがどのようにその取り分を増やすのかが疑問だった。そして何より、メディアの鞘取引(「売り」と「買い」を同時に行い、 その価格差=サヤの伸縮から利益を狙う投資手法)を行うエージェンシーが、真に代理店であり得るのかということにも疑問を抱いた。

クライアントも共謀している

米DIGIDAYは当時、しばしば「憎悪に満ちたメディア」と非難され、訴訟の脅しを受けたこともある。ただし、総合的に考慮すれば、そのマージンの金額はさほど大きくなかったため、誰もあまり気にしてはいなかった。クライアントが気にしていたのは、上司にいいところを見せるために、経費を削減することだ。愚かなことに、特に「ノンワーキング・メディア」として知られるブランド構築のためのメディアの経費をだ。

ANAのレポートをめぐって、多くの注目がエージェンシーに集まった。だが、タンゴは2人で踊らないとはじまらない。この問題には、クライアントとエージェンシーという2者が関与している――分け前にあずかっているアドテクベンダーを含めるなら、3者の問題だが。

このレポートの結論を受けて、クライアントはいかにも憤慨した態度を示すかもしれない。だが、真実はレポートの50ページ目に書かれていた。ANA調査担当者の指摘によると、メディアの腐敗に大きく寄与しているのは、「料金設定に関するクライアントからの圧力」だという。そして、それが実際、すべての原動力となっているのだ。

クライアントは、予算調達部門から非難を浴びるのを避けるため、エージェンシーに支払う料金の利鞘がゼロ近くになるまで抑えることに専心している。エージェンシーが収益を得るためにほかに方法を見出そうとするのも想像に難くない。誰もが支払い待ちの請求書を抱えている。どうひいき目に見ても、クライアントは共謀していたと考えられる。

関係の再構築が最優先事項

何年も前のことだが、エージェンシーの二重契約が話題となった極秘会議で、ある情報筋が筆者にこう総括したことがある。「これは詐欺ではない、共謀だ」。この情報筋は、誰もが関与していると伝えたかったのだ。ゲームの内容はこうだ。ベンダーは毎日かかさず、そして日曜には2回、ビジネス維持のためにリベートを支払う。それがエージェンシーにおける利鞘を稼ぐ方法となる。そしてクライアントは、最高財務責任者(CFO)の元に舞い戻り、エージェンシーの料金をどうやって下げさせたかについて披露する。誰もがウィンウィンの状況だ――このゲームに参加していない者を除いて。

こうした問題すべてに対する明らかな解決策は、ひとつしかない。それは、実にシンプルだが――「信頼する」ことだ。とはいえ、盲目的に信用せよ、という意味ではない。すべてにわたって透明性が必要だ。エージェンシーが代理店の役割を真に果たせるよう、クライアントは、エージェンシーと協力的な関係を再構築する必要がある。

しかし、あるアドテク企業の幹部は、透明性レポート公開後にため息まじりにこんなことを語った。「クライアントが、エージェンシーの透明性について、その利益の上げ方を告発しなければ、こういうことにはならなかっただろう」。

「おそらく、我々は今後、もう少しよいシステムを築いていかなければならない」。

Brian Morrissey (原文 / 訳:ガリレオ)