メディアエージェンシーのAI活用、いかに導入すべきか?:マクサスの事例

従来はメディアエージェンシーが手がけてきたメディアプランニングやメディアバイイングの分野に、スマートな人工知能(AI)プラットフォームが進出している。

エージェンシーのマクサス(Maxus)はここ数年、いくつかのAIプラットフォームをテストしてきた。そのなかから「ルーシー(Lucy)」を主に使用し、構造化されたデータを再整理して、効率を向上させている。

たとえば、最近あるホテルチェーンは、系列のビジネスホテル、エコノミーホテル、高級ホテルでどれだけ利用者層が重複しているかを把握したいと考えた。依頼を受けたマクサスは、ルーシーを使って異なるオーディエンス層を抽出し、それぞれがどんなメディアを通じて同ホテルチェーンに接しているかを分析した。また、アジアのある化粧品ブランドからは、口紅やマスカラなどの製品ごとにオーディエンス層を把握し、それぞれがテレビ、デジタル、モバイルを通じたメディア消費にどの程度影響されているかを国別に分析するよう依頼された。

AIはコラボの機会

マクサスの北米事業を担当する最高プランニング責任者デビッド・ゲインズ氏は、エージェンシーはAIプラットフォームを競合ではなくコラボレーションの機会と見るべきだと考える。

「AIがメディアエージェンシーを破壊することはない。このようなテクノロジーは、我々が進化するための手段になる」と、ゲインズ氏は語る。「我々が有する人材を活用し、その価値をクライアントにもたらすうえで、膨大な手作業は邪魔になる」。

AIソフトウェアは、大量のデータを組み合わせ、迅速にソリューションを提供することにより、マーケターの時間を節約してくれる。その劇的な例として、食品大手のドール・アジア(Dole Asia)が導入したAI「アルバート(Albert)」は、あるデジタルキャンペーンのメディアバイイング、最適化、配置のすべてを自立的に実施した。アルバートのようなテクノロジーは、CTA(コールトゥアクション)広告でダイレクトレスポンスマーケティングを積極的に行っている業種には有効だ。しかし、顧客が競合のなかから自社を選ぶ理由を作りたいと考えるブランドなら、そのメディア戦略はコミュニケーションプランニングとバランスを取る必要があると、ゲインズ氏は指摘する。

「自動車ブランド5社がどこも同じAIツールを使っていたら、プラットフォームはよく似たメディアプランニングとメディアバイイングを提案するだろう。そうなったら、どこで差をつける?」と、ゲインズ氏は語る。「やはり人の手は必要だ」。

AIの長所と短所

また、ルーシーのようなプラットフォームでは、構造化されていないデータの処理は難しい。具体的には、消費者調査、メディア消費データ、クライアントのファーストパーティーデータなどだ。メディアプランナーは、そうしたデータをまず構造化してから、AIにデータを再構成させる必要がある。プログラマティック広告において、この作業はとりわけ時間がかかると、ゲインズ氏は指摘する。

「我々が複数のデータソースを比較できるように、メディアプランナーは驚くほど長い時間を費やしてExcelデータをコピペしている。だが、それはすでに起きた結果を知るためだけでなく、将来に向けたインサイトとして活用することが目的だ」と、ゲインズ氏は語る。

ルーシーの事例からは、AIの長所と短所が見えてくる。たとえば、ルーシーはキャンペーンに最適な広告媒体(検索、ソーシャル、雑誌、屋外、テレビなど)の提案はできる。だが、Facebook、Snapchat、Twitterなどから特定のソーシャルネットワークを推奨することはできない。異なるソーシャルプラットフォームを比較する統一の測定基準がないからだ。また、「これらのホテルの宿泊客はどんな人たち?」といった質問は、答えに幅があるためAIを混乱させることがあると、ゲインズ氏は説明する。

「ルーシーは、実質的に観測値であるデータをまとめるのは得意だ」と、ゲインズ氏は語る。「しかし、そうした観測値からどんなインサイトが得られるかを答えることは、現在のAIにはできない。つまり、我々の仕事はまだしばらくは安泰ということだ」。

Yuyu Chen(原文 / 訳:ガリレオ)