急成長するeスポーツはメディアビジネスの実験場:今週のデジタルサマリー

今週のトピックは米メディア複合体のディズニーがeスポーツのテレビ番組の放送を開始したことだ(DIGIDAY US)。ESLは410大会を開催した実績のある大手オーガナイザー。番組は大会の模様を中心に伝える「ESL ブロウラー」と、どれだけゲームクリアを速くできるかを競い合う「ESL スピードランナー 」の2番組だ。

米国と韓国では完全にスポーツとして成立している。ESLが展開するストリーミングでは実況者と解説者が分析や見通しを話し合い「試合」が開始される。試合観戦もほぼサッカーリーグと同様の形。実況、解説、リプレイに加え、選手はユニフォームを着用し、会場の観客はサッカーのサポーター同様応援歌を歌う。試合と同時に、視聴者のあいだで多量のチャットが行われ、ときに非常に手厳しい非難がされる。

PwC予測:2021年に900億円市場

主要10カ国におけるeスポーツ収益は2016年に3億2700万ドル(約360億円)だが、2021年に8億1700万ドル(約900億円)へと成長すると予測される。CAGR(年平均成長率)は21.7%と高い。

下の予測図を見てほしい。収益ソースは物販(ピンク)、スポンサーシップ(焦げ茶)、動画ストリーミング内広告(赤)、チケット(オレンジ)。動画ストリーミングの伸びが著しいと予測され、2016年の9800万ドル(約110億ドル)2021年には3億9100万ドル(約434億円)で収益全体の44.7%を占めると予測される。

esport.pwc(出典PwC「Global entertainment and media outlook 2017-2021」)

スポンサーシップも堅調に推移し、2021年に2億6100万ドル(約290億円)。インテル、NVIDIA、コカ・コーラ、レッドブル、Samsungなどゲーミングに関連する製品を提供する企業がスポンサーシップを取る。

eスポーツはロイヤルカスタマーを集めるモデルが機能している。プレイヤーと観戦者がともにゲーマーであり多大な熱量を注いでいる。興味関心が一致したロイヤルカスタマーに対し、物販、チケット販売、スポンサーシップ、動画ストリーミング広告などの収益化が機能するのは疑いようがない。

メディアビジネスの実験場

eスポーツはメディア関連ビジネスの先鋭的な実験が可能な場と言えるだろう。「eスポーツ業界に学ぶ、新しいメディアビジネスの方向性」(DIGIDAYルチンダ・サザン記者)によると以下のことを試せる。

  • 視聴権に対し課金するペイ・パー・ビュー(PPV)モデル。ボクシングのメイウェザー対パッキャオ戦ではPPV購入数が過去の記録の倍近い440万件、売上は4億ドル(約440億円)に達している。
  • マイクロペイメント。Twitchではプレイヤーはゲーム内仮想通貨によりプレイヤーへの投げ銭ができる。

以下、今週のその他のトピック

▼Amazonがインスタ風アプリ

Amazonはショッピングソーシャルメディア「Amazon Spark」を19日(現地時間)リリースした。インスタグラムのコマース直結版。フィードの中を流れるパブリッシャーやインフルエンサーのコンテンツからAmazonアカウントで即コンバージョンする。

▼Amazonの「メディア価値」に気づくエージェンシー

メディアとして大きな価値が認められるAmazon。WPPは今年Amazon特化型コンサルを買収。GoogleとFacebookのデジタル広告複占(デュオポリー)に業を煮やすWPPにとって敵の敵は味方ということか。

▼想像し計画する人工知能

Deepmindは同社所属研究者の論文をまとめたブログで、いくつものシミュレーションを走らせ行動を計画するエージェントの開発に成功したと明らかにしている。外部環境の変化に適応しながら、優れた行動を探ることができることが、ゲーム「Sokoban」でのテストで確認されたという。

▼Facebookのサブスクリプション機能テスト進む

メーター課金とフリーミアムモデルでパブリッシャーをサポートする見通し。Facebookに懐疑的なニューヨーク・タイムズ(The New York Times)、エコノミスト(The Economist)など、メーター課金を導入するパブリッシャーに便宜を図ることになりそうだ。

▼NBCはSnapchat限定コンテンツに従業員30人

NBCの30人がSnapchatコンテンツ制作、配信に携わる。Snapchatの若いユーザー層がテレビを観ない層と重なっている。モバイルに合わせた縦型のフォーマットなどテレビとは異なるクリエイティブが必要になる。

▼米オンラインメディア、広告枠数を減らす

米オンラインメディアには収益を増やすため枠数を減らし、単価を上げる傾向がでているという。Google Chromeに、規定を守らないアドに適用されるアドブロックが載ることなども影響しそうだ。

Written by 吉田拓史
Photo by ESL One