ブランド企業がアドブロックを「歓迎」すべき理由

この記事は、広告代理店McKee Wallwork + Companyのクリエイティブ・ディレクターである、デーブ・オルテガ氏による寄稿です。

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広告戦略の王道として、オーディエンスを拘束し、彼らがもうやめてくれと悲鳴をあげるまで広告を押し付ける横暴なやり方がまかり通っていたのは、過去の話になった。より快適なオンラインエクスペリエンスを切望する一般大衆の声に応えてアドブロックが登場し、人々が広告の押し付けに屈していた、これまでの力関係は逆転した。

以前のコンテンツは(ある程度は現状でも)たいしてお金がかからないか、あるいはまったくタダで手に入るものだった。現在、我々は「オプトインモデル」(同意、参加型モデル)の黎明期にあり、ユーザーは優れたコンテンツにはお金を出したり、ソーシャルメディアで賞賛したりするなどの影響力を手にしている。

まだ、気づいていない人のために言っておこう。広告の戦局における風向きは、大きく変わりつつあるのである。

歓迎される広告の始まり

2016年が明けたいま、今後予想できる現実として、マーケターには2つの選択肢がある。

    1) アドブロックとの終わりのない戦いを続け、ターゲットオーディエンスを敵に回す。
    2) より良いエクスペリエンスを求める声に応じ、ブランド力でこれに対応していく。

マーケターや企業にとって、希望があるのは選択肢 2) となるだろう。人々は、邪魔くさいバナー広告やプレロール動画広告のない環境とコンテンツに飢えている。つまり、実はアドブロックこそ、広告の将来的な繁栄の鍵を握っている。旧態依然な策を捨て、今後どうしたら広告が文化として歓迎されるようになるのかを考えるきっかけを与えてくれるからだ。

参加権を持つユーザー

一部のブランド企業では、すでにこの好機を捉えている。エナジードリンクの「レッドブル」は、「レッドブルテン」サイトを開設し、エネルギッシュなライフスタイルをテーマに同社が監修・作成した動画や読み物を展開している。

このサイトでエナジードリンクを購入したり、製品についての情報を得たりすることはできないが、レッドブルがどういうブランドなのかは明快に理解できる。さらに、レッドブルでは、サイトにバナーを一切載せず、アドブロック戦争を回避している。

高級ファッションブランドであるコール・ハーンは、Apple Payと新しいアプリを活用し、増え続けるインスタグラムのフォロワーを実際に売り上げに結びつけつつある。

最近、マイクロソフトでは、9人のSF作家に対し、若い頭脳がその実現を試みたいと思うような未来の姿を描いて欲しいと要請し、インスピレーションを提供すべく同社のラボに作家たちを招き入れた。マイクロソフトでは、彼らの作品を短編集として出版するという。

制約こそイノベーションの源

オーディエンスの裏をかくような策をやめ、どうしたら人々が欲しがっているものを提供できるかを考えるには、パラダイムシフトに迫られるブランドもあるだろう。しかし、こうした新しい課題や制約こそ、画期的なイノベーションを実現する環境を生み出すのだ。

いま、ブランドの足かせになると思われていたアドブロックが、オーディエンスと関わっていく上でのクリエイティブなアプローチを生み出す起点となっている。

アドブロックは、とりあえずは頭痛や心配の種として存在しているだろう。しかし、アドブロックが、ブランドにとってオーディエンスとの有意義な絆を考え出す契機になったと見なされる日は、すぐそこまで来ている。

Dave Ortega(原文 / 訳 片岡直子)
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