最大CPM40%増も。ヘッダー入札はメディアの救世主か?

一部のアドテクノロジー企業は、ヘッダー入札(ヘッダー・ビディング)を喧伝している。パブリッシャーの利益が増大するだけでなく、Googleに一泡吹かせることができるというのだ。パブリッシャー側も、その熱狂を受け入れている。

ヘッダー入札とは、手持ちの広告在庫(インベントリー)を複数のアドエクスチェンジへ同時に提供するというプログラマティック取引の高等テクニック。同じ広告在庫に対してすべてのバイヤーへ同時に等しく入札機会を与えれば、入札者間の競争が高まり、パブリッシャーの広告収入が増えるという考え方に基づく。

ヘルスケアや転職など、ある分野に特化した検索エンジンを運営するグラフィック(Graphiq)では、ヘッダー入札のおかげでCPM(表示1000回あたりの単価)が40%近く上昇した。同社のプログラマティック部門を率いるコーリー・ウィーラー氏によれば、この手法の登場で、広告在庫を間接販売によって収益化する方法は「完全に変わった」という。

CPMを大幅改善した媒体も現れる

「我々にとって本当に大きな変化だ。非常にシンプルに、それが誰であろうと最高額入札者がインプレッションを獲得する。だから、最適化のコストは、パブリッシャー負担からバイヤー負担になるのだ」と、ウィーラー氏は言う。言い換えれば、ヘッダー入札は、「ウォーターフォール方式」を駆逐しつつあるのだ。ウォーターフォール方式とは、少量・高価格の状態でインプレッションをアドエクスチェンジに投入し、バイサイドの状況をみながら供給量を増やしていく、枠の売り方だ。

同じような成果をあげているパブリッシャーはほかにもある。たとえば、宿題ヘルプサイト「スレイダー(Slader)」では、昨年ヘッダー入札を導入してからCPMが20~50%増加した。「イージービブ・コム(Easybib.com)」や「サイテーションマシン・ネット(CitationMachine.net)」など教育関連サイトを運営するスタディブレークメディア(StudyBreak Media)では、ヘッダー入札による収益が全体の25~30%を占めている。

「ヘッダー入札により、プログラマティック広告は競争が激しくなり、勢いも強くなった。これはソリューションの改善であり、単なる流行ではない」と、スタディブレークメディアで成長および収益戦略部門の責任者を務めるエミリー・ダウニングホール氏は語った。

アドテク企業も、ヘッダー入札をチャンスと見ている。アドテク大手のアップネクサス(AppNexus)、インデックス・エクスチェンジ(Index Exchange)、イェールドボット(Yieldbot)など、自前のヘッダー入札技術を導入する企業は、とりわけこの1年間で増えてきた。ヘッダー入札の有効性が話題となって広まるなか、パブリッシャーによる導入は、ここ数カ月で急増したという。

媒体のGoogle依存に一石を投じる

さらに、ヘッダー入札をGoogleに対抗する手段と見るパブリッシャーもある。Googleは、「DoubleClick for Publishers(DFP)」と「DoubleClick Ad Exchange(AdX)」により、パブリッシャーの広告スタックをがんじがらめにしているのだ。だが、ヘッダー入札によりパブリッシャーは、DFPとAdXのタッグを回避し、広告在庫をめぐってAdXをサードパーティーのアドエクスチェンジと競合させることが可能になる。

Googleもこの動きをすでに意識している。「ファースト・ルック(First Look)」という独自のヘッダー入札技術を開発中であると先月発表したのがその証だ。

パブリッシャーのデジタル広告戦略策定を支援するMSG Inc.でチーフ・コンサルタントを務めるマシュー・ゴールドスタイン氏は、次のように述べている。「現在、ほとんどのパブリッシャーはDFPの世話になっているが、ヘッダー入札により、ほかのパートナーとまったく新しい関係を築く道が開ける。FacebookやGoogleを相手に戦うパブリッシャーとして、我々はデータをできる限り多く手に入れ、何もかも自分でコントロールできる状態にしておきたい」。

Ricardo Bilton(原文 / 訳:ガリレオ)
Photo by Rafael Matsunaga(CreativeCommons)