いまデジタルマーケティングが必要とする人材とは:博報堂DYデジタル小柴優氏

デジタル化の進展で、顧客を取り巻く環境は変わり、企業は統合された顧客体験を一貫して提供することが収益に直結する時代に突入した。広告会社の役割も、従来のマーケティングコミュニケーションの担い手から、より顧客のビジネスに直結した「アウトカム」志向へと変化しつつある。

2016年4月1日に誕生した博報堂DYデジタルでは、博報堂DYグループのデジタル中核会社として、デジタルマーケティングを進化、拡大させている。同社メディア・ソリューション本部 プラニング開発ユニット プラニング開発グループ グループリーダーの小柴優氏は、今後の広告会社に求められるのは、「データに強く、セクショナリズムを飛び越えるプロデューサー人材だ」と語った。

以下、一問一答形式でインタビューを紹介する。

◆ ◆ ◆

――デジタルマーケティング領域で起きている変化をどう見ていますか?

いまや、デジタルを度外視したマーケティングがあるのか、というくらいデジタルマーケティングはマーケティングと同義になりつつあります。

ブランドのターゲットとなる人が誰で、どこにいるのかというのを知るためにデータを活用することや、マーケティングの基盤がデジタル化することがデジタルマーケティングだとするなら、それはすなわちマーケティングそのものの進化と同じだからです。

顧客を取り巻く環境が変わり、「顧客は変わった」といわれます。インターネットを中心にサービスが多様化し、ブランドと顧客とのタッチポイントが増えていくなかで、従来のマスメディアを中心とした広告ではブランドのメッセージが届きにくくなり、新たなマーケティングのアプローチが求められています。

顧客とブランドのあいだを「点」として見るのではなく、購買に至るまでのライフステージ全体を統合し、コンバージョンに対するアシスト効果を見ていく必要があるのです。

統合するためには、従来の広告メディアだけでなく巨大なエコシステムが必要で、僕らが提供するサービスもエコシステム全体にどれだけ貢献できるかを考えなければなりません。同時に、広告効果、マーケティグ効果の可視化も考える必要があります。

そこで必要になるのがデータの活用です。

――データを活用するには、どんな素養が必要でしょう?

大きく3つの側面があります。1つ目は、データがもつ意味をクライアントにきちんと可視化できる、説明できる能力を持っている人材です。広告会社でいえば、データアナリスト、データサイエンティストということになります。膨大なデータからインサイトや知見を導き出すことは、広告会社が提供できる価値のひとつです。

2つ目は、素材としてのデータを料理し、マーケティングソリューションに昇華して提供する業務をリードできる人材です。データをソリューション化することによって、マーケティングプロセスのPDCAを回していきます。そのようなサービス開発の能力です。

3つ目は、そうしたツール、ソリューションを使いこなせる人材です。分析ツールやダッシュボードを使いこなし、それをマーケティングのプロセスにうまく活用できる人です。

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「新たなマーケティングのアプローチが求められている」と語る小柴氏

これからは、クリエイターであっても、データを扱いながらクリエイティブを作っていくことが求められてきます。ですから、新しい職種、スキルというより、自分のスキルをデジタルに適応していくことに、嫌悪感、抵抗を感じない人ということができるでしょう。

上記の3つの能力のなかでは、とくに2つ目の「データを活用したソリューション開発をリードできる」人材に注目しています。ソリューション化については、自社開発だけでなく、たとえば外部ベンダー、プラットフォームのツールを活用することもあります。

また、複数あるメディアを統合してマーケティングするときに、オンラインだけでなくオフラインやマスメディアに至るデータを統合して、価値を提供する必要があります。

そのときに、プラットフォームとのアライアンス構築、開発プロジェクトを推進する上で、データについての理解が不充分だと質の高いソリューションが開発できませんし、一方で現場での経験が乏しいと、使う人にとって望ましいツールが作れません。こうした大規模プロジェクトを推進できる人材は、広告会社の中でも少ないのが現状だと感じています。

――「データに強い」のはどのような人材でしょうか?

あくまで私見ですが、「データに強い」というと、リサーチや統計解析といったアナリストやデータサイエンティストのスキルをイメージしがちです。もちろんそうしたスキルも重要ですが、それだけでなく、上述したようなアライアンス調整、プロジェクト推進といったビジネススキルを備えたプロデューサー能力も求められています。

広告会社のなかには、従来と変わらない広告業務もまだまだありますが、一方でデータに基づいてROIや広告効果をシビアに求められる業務が急速に増えているのは事実です。そうしたなかで、データを活用したマーケティングを強化していくためには、開発を担当するエンジニアや、データサイエンティストなどの専門職と共通言語で話ができて、かつ、顧客に接するフロント経験を有したプロデューサー人材がますます重要になってくると思います。

――なぜプロデューサー人材が必要なのでしょう?

統合プラニングという業務は、「全社ごと」になってきます。マスメディアを担当する部門との連携や、よりマーケティングの上流を担う戦略プラニング部門ともワンストップで連携する場合があります。

それぞれが独立した部門では、プロジェクトのなかでの立場で軋轢が生まれることがあります。こうしたセクショナリズムは実はどの会社でもある話です。

広告会社もこれまではクライアント別にチームを組んで、顧客のオーダーに答えていくのが仕事でした。しかし今は、いわば0から1を作る事業会社型の仕事も増えています。

それに伴って、関係各所との連携が増えてきました。そこをうまく束ねていくためには、先述したプロデューサー人材が、関係各所を横断していく必要があります。

――これまではマーケティングのなかで、データの活用は一部分でした。データが多様化し、活用場面が増えることで、従来と違うマインドセットの人材が必要になったということでしょうか?

これまでは、たとえばメディアの効果測定のひとつとして視聴率のデータを活用したり、顧客を知るためのデータとしてパネル調査のデータを活用したりしていました。こうしたデータは今後も重要ですが、それ以外にもオンライン、オフラインのアクチュアルデータ、あるいは決済情報、位置情報というように、情報の粒度が多様化しています。

また、データ活用という意味でも、ターゲット分析、広告効果測定、オンライン広告配信の運用、コンテンツ評価、いずれにおいても取り扱うデータの対象範囲は拡がり、多様化しています。

そこで、広告会社がどういうデータをもっていて、どのように活用するソリューションがあるか、それが競争優位性の源泉になってきました。データソリューションが重要性を増しているのです。

――データソリューションを生み出せるのはどのような人材ですか?

データソリューションを生みだすために必要な人材は、先述の通りに複数のタイプがあり、それぞれのエキスパートの存在が必要不可欠です。ただ、今後はより一層、統合型データソリューション開発や外部パートナー企業等との協業が活発になる中、プロジェクトを推進するプロデューサー人材に求められる役割は特に高まってくると考えます。このようなプロデューサーは、数字に強く、フロント業務経験があり、更に仕組み化することに長けていることが望ましいです。

これからの広告会社は、そうした人材も積極的にリクルーティングしていく必要があると考えています。

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「顧客ごと、シチュエーションごとに最適な広告表現のあり方を模索していきたい」と語る小柴氏

――ソフトウェアカンパニー的なアプローチも必要になりますか?

たしかに、僕らの仕事は、フレームワーク化という意味でソフトウェア開発に近い要素があると思います。たとえば、開発の専門スタッフはソフトウェア開発会社からの転職組もいます。

また、0から1を作ってきたスタートアップ系の人材など、中途採用で活躍している人材も多くいます。従来の広告会社の業務スタイルと違うので、外部でそういう経験をしてきた人材は即戦力として貴重です。

――今後、どういうサービスを提供していきたいと考えていますか。

デジタルマーケティングの重要性が高まり、扱う対象も広がっています。そのなかで、変化、多様化するブランドとのタッチポイントにアプローチできるシステム、インフラを整えつつ、そこにどれだけ適切に広告を出稿すべきか、かつ、さまざまなタッチポイントに向けて、画一的なメッセージでなく、顧客ごと、シチュエーションごとに最適な広告表現のあり方を模索していきたいです。

それを手動でハンドリングすることはますます困難になっていくでしょう。広告、マーケティング効果の可視化を精緻にやっていくのは気が遠くなる作業です。システムによる自動化やAIの活用という話も出てきます。

そうした潮流をリードしていくためには、目の前の現象をしっかり見据え、ソリューションを開発していかなければなりません。

データ化、自動化の潮流のなかで今後は、広告会社単体でソリューションを提供していくのは難しくなってきます。データホルダーやプラットフォーム、ソフトウェアベンダーやリサーチ会社など、いろんなプレイヤーと連携しながら、新しいサービス、ソリューションを国内だけでなく、海外を含めて開発していく必要があると考えています。

――最後に、転職希望者へのメッセージがあればお聞かせください。

大きく2つあります。1つ目は、博報堂DYデジタルというと、博報堂DYグループのデジタル業務のみを担う会社と思われがちですが、デジタルという言葉が、いわゆるデジタルメディア、マーケティングの一部分ということでなく、マーケティングそのものと同義になりつつある今、それはあくまで一側面でしかないということ。

2つ目は、転職希望者にとって博報堂DYデジタルという会社は、広告会社の役割が再定義されていくなかでの、中核領域で力を発揮できる会社であるということができます。

業界のなかで新しい仕組みを作りたい。ゲームのルールが変わる中で、博報堂DYデジタルで新しい価値を作りたい人にチャレンジして欲しいと思っています。

▼小柴 優thumb

株式会社博報堂DYデジタル メディア・ソリューション本部プラニング開発ユニット プラニング開発グループ グループリーダー

2010年、博報堂入社。営業職として、コンシューマーヘルスケアブランドのマーケティング戦略立案、メディアプラニング、アカウントマネジメント等、幅広く広告関連業務に従事した後にデジタル領域へ。 現在は、デジタルマーケティングに関するプラニングソリューションの開発・推進から、外部企業とのパートナーシップ・アライアンス戦略構築および実行まで、博報堂DYグループの付加価値を高めることを目的とした様々なソリューション開発、ビジネス開発プロジェクトの推進に取り組んでいる。

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Written by 阿部欽一
Photo by 渡部幸和