カンヌ広告祭に水を差す、エージェンシーのリベート問題:全米広告主協会「透明性レポート」の余波

国際広告祭「カンヌライオンズ」は、広告業界の人間たちが集まり、まあまあ及第点のロゼワインを飲みながら、1年間の創造的な成果を称える機会だ。ベテランたちに言わせると、エージェンシー、クライアント、そして多数のアドテク集団が結びつきを強める好機だという。会期の1週間は、誰もが休戦することに同意する。

ただし、今年はそうはならないかもしれない。

全米広告主協会(Association of National Advertisers、略称ANA)が、リベートやキックバックなど、メディアエージェンシーの世界における多くの不透明な商慣習について詳述した「透明性レポート」を公表したことから、カンヌ広告祭のいつものお祭りムードが幾分損なわれる可能性があるのだ。あるメディア幹部が言ったように、クライアントらは、例のロゼには目もくれず、「誰がその金を払っているんだ?」と尋ねざるを得なくなるかもしれない。

関係者が一堂に会するイベント

カンヌ広告祭は1950年代に、映画館で上映される「劇場コマーシャル」のすぐれた作品を祝福するパーティーとして始まった。こうしたコマーシャル映像は、エンターテインメント業界のブランド部門によって制作されたもので、当時のカンヌ広告祭には、制作会社とエージェンシーだけが参加していた。その後次第に、広告業界全体を網羅する社交の場へと発展してきた経緯がある。カンヌ広告祭自体がそうした動きを促進してきた。広告祭が開かれる前の数カ月間、米国と世界の企業が行うロードショー(投資家向け企業説明)で、幹部たちは最高マーケティング責任者(CMO)の言葉を引用しながら、ブランドのマーケターがカンヌ広告祭に来る必要がある理由についてまくしたてる。

つまりカンヌ広告祭は現在、クライアント、エージェンシー、そして彼らにサービスを提供するベンダーが一堂に会する、めったにない機会のひとつになっているのだ。たしかにカンヌ広告祭ではビジネスが行われていると、多くの幹部が強調する。あるCEOも「私自身、カンヌへ仕事をしに行くひとりだ」と話していた。ただし、白い麻の服を着た、リラックスした雰囲気の会合を通して行われる仕事なのだが。

カンヌ広告祭では、クライアントの獲得や人材の引き抜きといった重大な業務も行われるが、通常とは違った陽気な雰囲気の中で行われる。広告代理店ジェイ・ウォルター・トンプソン(J. Walter Thompson New York)でグローバル・チーフクリエイティブを務めるマット・イーストウッド氏は2015年、次のように述べている。「カンヌ広告祭はおそらく、各国のクリエイティブとエージェンシーの幹部が丸1週間もワイン片手に談笑する唯一のイベントだろう。当然ながら、スカウトと求職者の両方にとって格好の場になる。特に、カンヌライオンズを獲得するつもりの求職者にとっては好機だ」。

だからこそ、全米広告主協会「透明性レポート」が業界に投げかけた非常に深刻な話題は、この広告祭に気まずさをもたらすわけだ。

レポートが投げかけたもの

特に問題なのは、レポートが公表されたタイミングだ。そして、これは偶然の一致ではないと、大半の幹部が口をそろえる。公表からカンヌ広告祭の開幕日まで1週間ちょっとあるので、クライアントは余裕を持って質問を用意できる。業界団体のANAがそうするよう促しているのだから、なおさらだ。ANAはカンヌ広告祭に大勢のスタッフを派遣するわけではなく、2人の幹部を参加させる予定だ、と同団体の広報担当者は述べた。

あるメディアエージェンシーのプレジデントは、「透明性と答えを探し求めることが、大きなテーマになろうとしている」と述べた。この人物は、すでにいくつかの新たな会合がスケジュールに追加されたと付け加えた。別のメディア幹部は、参加者はしゃべりすぎないよう用心するだろうし、ガードを固めるはずだと話している。

あるメディアの幹部は、このレポートに対して積極的に反応するのは、多くのブランドの利益に反すると見られるかもしれないが、本来はそうであるべきではないと語る。「私個人としては派手にやりたいところだ」。

アドテック企業アンダートーン(Undertone)の共同創業者、エリック・フランキ氏はこう語った。「業界人は今後2週間、レポートについての反応を読んだり考えたりするだろう。今回のカンヌは、(レポート発表以来)初めて、すべての上級幹部が同じ時間、同じ場所に集まる機会だ。誰かに会えば、お互いの胸中にこの件があることを想像できる」。

Shareen Pathak(原文 / 訳:ガリレオ)