エージェンシーにおける「トレーディングデスク」の未来:生か死か?

米DIGIDAYでは2012年から、代理店が提供するプログラマティックバイイングサービスであるトレーディングデスクに関する調査を実施し、レポートしてきた。

トレーディングデスクとは、広告代理店が広告主に提供する、プログラマティック広告のキャンペーン設計から配信までを一貫して請け負う組織だ。代理店がアドテク企業を買収することで生まれたこの業態はいま、難しい状況に追い込まれているのかもしれない。

というのもクライアントは、コスト削減やトランスペアレンシー(透明性)、そして円滑なマネジメントを求め、メディアバイイングを自社で行うことが多くなってきたからだ。しかも、Googleのような大手メディアは、商品やキャンペーン・広告の分析ツールを拡充し、トレーディングデスクの存在を脅かしている。

過去、検索エンジンがそうであったように、トレーディングデスクも進化を続けなければ死を待つのみだ。勢いを失った若い企業は、よく2つの選択肢を迫られる。合併するか、倒産するか、だ。これが業界の進むべき道なのかどうかはわからないが、物事は確実に変化している。

米DIGIDAYは、代理店におけるトレーディングデスクの未来はどうなるのか、フランスのピュブリシス(世界3位)、イギリスのWPP(世界1位)、アメリカのオムニコム(世界2位)に話を聞いた。

ヴィヴァキ(VivaKi):ピュブリシス

ピュブリシスは、従来のトレーディングデスクモデルに、挑戦的な姿勢を示している。2015年1月にはアドテク企業のヴィヴァキを合併すると発表。その後、ヴィヴァキのアカウント管理や、分析を含む顧客サービス部門は吸収されたが、データ部門やテクノロジー部門はヴィヴァキ・オペレーティング・システム(VivaKi Operating System)として生まれ変わった。

「私たちにとっては当然の行動だ」と、ヴィヴァキのグローバルクライアント部門の代表であるマルコ・ベルトッツィ氏は説明する。「しかし、プログラマティックのインフラ面という意味で、私たちの代理店にゼロから始めてほしくなかった。そのためにデータ部門やテクノロジー部門は残したのだ。そうすれば、ヴィヴァキもエキスパート集団として業界の中心に居続けられる」。

特定こそはしなかったが、ベルトッツィ氏は2015年に新たに参入したアドテク企業を例として挙げた。当初、多くの代理店から良い反応を示されていたが、ヴィヴァキのエキスパート集団は即座にその脆さを見抜いた。プログラマティックプラットフォームで培った経験を武器に、的確な疑問を投げかけることで、欠点を見抜くことができたのだ。結果、ヴィヴァキは、ピュブリシスを困難の道から救っている。

また、ピュブリシス傘下の多くの代理店はそれぞれ、テクノロジーベンチャー企業を所有している。このことから、ベルトッツィ氏は企業として完璧なバランスを見つけたと話している。プログラマティックな顧客サービスは合併するが、ヴィヴァキをピュブリシスの技術的中心として残らせるということだ。

「3年前から凄まじい速度で変化している市場だ。また、ビジネスは取り巻く業界や企業の変化に合わせて発展しなくてはならない」と、ベルトッツィ氏は話した。「顧客はトレーディングデスクのコンセプトをもう信じていない。導入され始めた当時には、良いフィードバックをくれる顧客も2、3社はいたが、顧客の多くはトレーディングデスクから離れることが正しい動きだと考えている。この現状を打破するのには、かなり厳しい環境だ」。

ザクシス(Xaxis):WPP

ピュブリシスとは逆に、WPPはプログラマティック部門であるザクシスを代理店と合併させていない。この主な理由は、WPPがザクシスをトレーディングデスクと認識していないからだ。

「絶対にトレーディングデスクではない」と、米ザクシスのCEOであるブライアン・グリーソン氏は話す。「私たちはプログラマティックメディア企業だ。また、私たちにはエクスチェンジと直通のビジネスチャンネル、管理サービスという3つのアクセス方法があり、それが独自性を生んでいる。このなかの管理サービスが、トレーディングデスクに一番近いものだ」。

ザクシスにおいてダイレクトビジネスとは、WPPグループのメディアエージェンシーであるグループM(GroupM)の顧客以外とも仕事を行うことを意味する。ヴィヴァキはピュブリシスグループの既存顧客のみを対象としているが、ザクシスは自由な行動が許されている。

「このダイレクトビジネスは2年半前にはじめた」とグリーソン氏。「私たちの収益源のなかで、もっとも急成長している。ダイレクトビジネスの25%は、グループMの顧客ではない」。

ザクシスが完全に独立性を保っている重要な証拠として、グループMに所属する代理店たちに資金協力などの責任を背負っていないことが挙げられる。このため、グリーソン氏にザクシスが合併される日を想像したことがあるかと尋ねると、彼は強気な姿勢で次のように語った。

「私たちは、ほかとは考えがまったく異なる親会社を持っている。私たちはこれまでも、これからも独立性を保ち続ける」。

アキュエン(Accuen):オムニコム

オムニコムのプログラマティック広告バイイング部門であるアキュエンは、トレーディングデスクと類似しているが、オムニコムはトレーディングデスクと認識していない。アキュエンのプログラマティック部隊は独立性を保った組織だ。

独立企業ではあるものの、「すでにアキュエンのスタッフたちは、オムニコムのスタッフたちと席を並べている」と、オムニコムのグローバルパートナーシップ部門のバイスプレジデントであるスティーブ・カテルマン氏は説明する。「これは多くの顧客が、プログラマティックをメディア戦略に組み込ませたがるからだ」。

しかし、これはアキュエンのスタッフが代理店側に移籍したということを意味しないとオムニコムは説明する。

「プログラマティック上の施策を、KPI(重要業績評価指標)分析チームとは別に打つことを望む顧客もいる」と、カテルマン氏は話した。「そして、プログラマティック部門の顧客には、まだ私たちのメディアエージェンシーと契約を結んでいない企業もある。私が言いたいことは、どのようなプログラマティックサービスでも、顧客が望むものを提供しなくてはならないということだ」。

Emily Siegel(原文 / 訳:BIG ROMAN)
Photo by Rafael Matsunaga(CreativeCommons)