グループM、アドブロックを回避できる強制表示広告にNO:「まずはユーザー体験の改善が先だ!」

英広告企業WPPのメディアバイイングユニットであるグループM(GroupM)に言わせれば、アドブロックに関しては「ダメなものはダメ」らしい。

メディアバイイング大手のグループMは、アドブロックに悩まされるパブリッシャーにとって新たな手段となりつつあるアドリインサーション(ad reinsertion:広告の再挿入)にノーを突きつけた。アドリインサーションとは、アドブロッカーをインストールしているユーザーに対して、パブリッシャーが広告を届ける手法のことだ。

パブリッシャーは、しばしばシークレットメディア(Secret Media)やソースポイント(Sourcepoint)などのベンダーの力を借りて、アドブロッカーが遮断した広告の再表示をおこなう。実際、こうした広告にはプレミア価格がつくこともある。広告をブロックしているユーザーはより価値の高いオーディエンスとみなされているからだ。だが、世界の広告費の約3分の1を管理下に置くグループMは、文字通りこうした手法を買っていない。

グループMの考え方

グループMコネクト(GroupM Connect)会長、ジョン・モンゴメリー氏は「アドブロッカーを使うという形で広告を見たくないとはっきり主張している消費者にリーチする方法として、これは不透明なやり方ではないかとの懸念を抱いている」という。

現在、グループMはパブリッシャーに対し、アドインサーションを「使わないよう強く要請している」。その理由のひとつは、一般のアドインプレッションと、アドブロッカーを回避して届けられたインプレッションを区別するのが事実上不可能だからだ。

グループMは、将来的にはさらに強硬な立場をとり、提携パブリッシャーには契約段階で、ユーザーがブロックしているクライアントの広告を再表示しないよう義務づける予定だ。また、同社のプライベートマーケットプレイスへの参入を希望するパブリッシャーにも同じことを義務づけるという。

モンゴメリー氏は次のように述べている。「(アドインサーションは)対症療法であって、原因への対処ではない。まずはユーザー体験を改善し、つぎに消費者と向き合って、ユーザー体験を改善したこと、できるだけ動作を軽くしたことを伝え、そのあと(サイトの)セーフリスト追加やアドブロックの停止を検討してもらうのが筋だ」。

ここまでして、消費者フレンドリーな手段が手詰まりになった段階で、初めてパブリッシャーは「サービス拒否」を視野に入れるべきだと同氏は主張する。

上昇するアドブロック利用率

パブリッシャーのふるまいを変えるためにグループMが圧力をかけるのは、これがはじめてではない。ビューアビリティー(可視性)に関して、グループMは業界の慣例よりも厳しい基準を要求しており、この問題には多くのパブリッシャーが、いまも頭を悩ませている

パブリッシャーがアドブロックの台頭により広告収入を失っているのは間違いない。インターネット調査企業コムスコア(comScore)によると、米国のデスクトップユーザーのアドブロック導入率は、5月の時点で9.7%。導入率は若年層で高く、18~24歳では16.5%のユーザーがアドブロックを使用している。

シークレットメディアとJWプレイヤー(JW Player)による2015年の調査では、米国内でデスクトップでの動画閲覧に使われた時間のうち、26%はアドブロックのせいでマネタイズされていないと判明した。シークレットメディアの最高経営責任者(CEO)を務めるフレデリック・モンタニョン氏によると、現在ではこの割合が32%に上昇しているという。

パブリッシャーがこの問題と戦う(あるいは問題を回避する)方法のひとつが、シークレットメディア、ページフェア(PageFair)、ソースポイントなどの企業と契約を結び、アドブロッカーを回避して売上を取り戻すためのテクノロジーの提供を受けることだ。シークレットメディアによれば、同社のテクノロジーを使用しているパブリッシャーは500社以上にのぼり、1月にはわずか15社だったところから急速に増加している。

こうした企業は、自分たちはあくまでパブリッシャーが求めるサービスを提供しているに過ぎず、またアドブロックの台頭はエージェンシーにも原因があると主張している。「エージェンシーはありとあらゆるソフトウェアやツールを使ってデータを収集し、非効率性を測定している。それこそが、現在人々がアドブロッカーをインストールする理由のひとつだ」と、モンタニョン氏は指摘する。

アドリインサーションが普及したワケ

それでも、グループMはアドリインサーションと縁を切るつもりのようだ。業界団体インタラクティブ広告協議会(IAB; Interactive Advertising Bureau)が先ごろ開催したアドブロッキングに関する会議で、少なくともアドリインサーションの試験的導入を検討している大手パブリッシャーがますます増えていることを感じたと、モンゴメリー氏は言う。

「アドリインサーションは、アドブロッカーがセーフリストに入れてくれるようなものだという意見があった。アドブロックプラス(AdBlock Plus)がまさにそれをやっているのは許しがたい。だが、そういうことをしていようがしていまいが、アドリインサーションの方がマシだということにはならない」と、同氏は言う。

ワシントン・ポスト(The Washington Post)は、少数のユーザーユーザーを対象としてアドリインサーションを実験的に運用している大手パブリッシャーのひとつだが、アドリインサーションを奨励しているわけではないという。目的は、アドブロック利用者を調査し、彼らが軽い広告ならば受け入れてくれるどうかを知ることだ。

ワシントンポスト最高売上責任者(CRO)のジェド・ハートマン氏は、「『できるからといって、やるべきだとは限らない』。もしも、この言葉が、ここ10年間の広告エコシステムの哲学の根幹にあったら、いまアドブロックが求められることなどなかっただろう」と語った。

「長期的な解決策としては悪手」

アドリインサーションがまだ初期の段階にあるとしても、また、パブリッシャーがそれはアドブロックから業界を救う救世主にはなりえないと認めているとしても、グループMは芽を摘んでおきたいとモンゴメリー氏は言う。

「我々は早い段階で『このやり方は認められない』と公言する必要がある。利用を考えているのなら、やめることだ。短期的には収入を取り戻せるかもしれないが、長期的な解決策としては悪手でしかない」(モンゴメリー氏)

Sahil Patel(原文 / 訳:ガリレオ)