何かがおかしい、インフルエンサーマーケティング技術:「ダッシュボードはテクノロジーではない」

インフルエンサーマーケティングが持てはやされ、専門の新興ベンダーが続々と生まれはじめた。このような企業は、エージェンシーやブランドがインフルエンサーたちと仕事を行いやすいよう、そして効果的なキャンペーンを実行できるようなサービスを提供している。

大規模エージェンシーも積極的に取り組みはじめた。アールピーエー(RPA)やマインドシェア(Mindshare)のような代理店は、インフルエンサーキャンペーンをすぐさま設定・展開できるよう、インフルエンサー専門ベンダーに頼っている。

「2006年当時であれば、インフルエンサーキャンペーンを実施するまでに、約1年半も期間を要した」と話すのは、マインドシェアの北米事業ソーシャルメディア戦略シニアディレクターであるジョーイ・リン・アデッサ氏だ。こうしたテクノロジープラットフォームを活用する利点は、インフルエンサーマーケティングを即時展開できることにある。現在では、数週間でローンチすることも可能だ。

だが、インフルエンサー専門ベンダーのダッシュボードには大きな課題があるという。RPAのデジタル戦略マネージャーのマイク・ドーセット氏は、現状インフルエンサーマーケティングの技術が断片化されていることを指摘する。

インフルエンサーの検索ツール、リスニング機能、レポート機能に至るまで、オールマイティなシステムを一括提供できるベンダー企業が少ないと、ドーセット氏。RPAは2015年、10数社のインフルエンサー専門ベンダーと仕事をした。しかし、エージェンシーを全体的にサポートするソリューションは、まだ見当たらなかったそうだ。

不明瞭な指標が混乱を招く

ドーセット氏は課題に対する不安をこう語る。「当社ではキャンペーンごとにインフルエンサーマーケティングのベンダーを選択している。その際、タレントの選択プロセスには大きな労力を要する。そして価格、効果測定、プロジェクト運用機能の基準がないことが、営業面と業務上の大きな課題になっている」。

22スクエアード(22squared)のエグゼクティブバイスプレジデント兼事業開発担当およびパートナーシップディレクターのクリス・タフ氏も、インフルエンサーマーケティングのベンダーを活用し、有望なインフルエンサーの掘り出しを社内で実施することを検討している。だが、悩みはつきない。同氏は、このようなベンダーはスケールリーチやオーディエンスの質などにおいて、正確なレポートの測定基準を掲示できないため、あるセグメント層にささる特定のインフルエンサーを発見する能力に欠けていると指摘する。

「なぜ多くのインフルエンサー専門ベンダーが、クラウトスコア(Klout score)(ソーシャル上の影響力を1-100で独自にランク付けしている企業)のように測定基準が不明瞭な指標を作り出し、物事をより複雑にしているのか、私には理解できない」と、タフ氏は嘆く。

包括的な支援ができていない

マーケティングコンサルティング企業、ライトハウス3(Lighthouse3)は、このほどインフルエンサーテクノロジー企業133社を調査した。その結果、インフルエンサーの選別、関係構築、請求に関するやり取り、キャンペーンの人材募集やオーディエンスへのリーチ、そして営業において信頼できるレポートの提供という、5つすべての必要条件を満たしているベンダーは、わずか27%しかいないという。

加えて、ライトハウス3のCEO、ミア・ダンド氏は「ダッシュボードは本当のテクノロジーではない」という。

同じく、インフルエンサー専門テクノロジー企業、タップインフルエンス(TapInfluence)のCEOプロミス・フェロン氏も「多くのインフルエンサー専門ベンダーは、ダッシュボード機能しか提供していないにもかかわらず、インフルエンサーネットワークまたはポイントソリューションと称している。また、単一のソーシャルメディアプラットフォームのみを重視したりしている」と、コメントした。

一環した契約基準すらない

また、ダッシュボードを活用したインフルエンサー専門ベンダー企業の大部分がうまくいかない理由のひとつとして、インフルエンサーとベンダーとのあいだに独占的な契約が結ばれていないことがある。大部分のインフルエンサーは、10数社のベンダーと仕事を掛け持ちしているため、ベンダー側がインフルエンサーの選択や、プロジェクト完成に至るまでのプロセスの裁量権を握ってしまうのだ。

このような状況は、インフルエンサーマーケティングに関わっているベンダー企業全体が、プロジェクト運用、契約面、コスト面、配信面で共通する基準をもちあわせていないことに起因していると、RPAのドーセット氏は説明。

「だから、インフルエンサーマーケティングのシステムのオートメーションばかりを進めてしまうと、ますます課題を深刻にしてしまう。ベンダーとインフルエンサーとの契約が緩ければ緩いほど、ブランドにとってプロジェクトのプロセスを把握することが、ますます複雑になる。エージェンシー、ブランド、ベンダー、インフルエンサーにとって、信じられないほどの手作業と稼働を要求することになるのだ」。

その自動化に価値はあるのか

インフルエンサーマーケットプレイスは、ブランドがプロジェクト概要とオプトインの報酬を提案し、はるかに効率化されたプラットフォームを提供している。しかし、その欠点はブランドやエージェンシーがプロジェクトに沿った内容のコンテンツ制作の管理をしにくいこと、それにともないクリエイティブのコントロールをできないことだ。

「インフルエンサーが作りたいと思うコンテンツに制作費をあてる価値があるのか、そして、そのコンテンツの効果測定をオートメーション化することは本当に価値があるのか、その議論には常に葛藤がある」と、ドーセット氏は語った。

Yuyu Chen(原文 / 訳:Conyac