コンサル企業の広告ビジネス、なにがまだ足りないのか?

コンサルティング企業がエージェンシーに取って代わろうとしている、という話題は業界では長く語られてきた。しかし、それが現実になるには、まだまだ時間がかかりそうだ。

広告エージェンシーにおける4大ホールディンググループのトップたちは、クライアントの減少、リストラ、そして売上予測の修正と厳しい四半期の現実を説明しながら、コンサル企業は大きなエージェンシーたちにとって脅威となるわけではないと語っている。エージェンシー側となるWPPのCEOマーティン・ソレル氏はアクセンチュア(Accenture)やデロイト(Deloitte)の広告ビジネスにおける収益に関して、業界メディアが「極めて不正確な予測を報道した」ことを批判するにまで至っている。コンサル企業がエージェンシー業務を拡大することは依然として脅威である一方で、その拡大がいくつかの要素で阻まれているのも事実だ。コンサル企業が取り組む必要があるチャレンジはどこにあるのか。

オーディエンスを知ること

コンサルとテクノロジーが広告エージェンシーによるプロダクションの闇の部分を明らかにした一方で、コンサル企業は自分たちの高額な手数料を弁護しなければいけない。コアブランディングやマーケティングといった部門からは支払いはやってこない。そのためメディアとデジタルの部分に注目せざるを得ないのだ。しかしメディアとデジタルの予算に食い込んで行く、と口で言うのは簡単でも実行するのは難しい。メディアオーディットよりもはるかに大きなブリーフでCEOやCFOと働くことが通常であるコンサル企業にとってはなおさらだ。

メディアに関して言うと、広告主はプランニングにおける専門知識を求めており、それに対してプレミアム料金を払う意図がある。PHDはユニリーバのグローバル・プランニングを受け持ち、その実行とバイイングを担当しているのはマインドシェア(Mindshare)だ。コンサル企業たちはこのチャンスに食い込むことはまだ十分にはできていない。コンサル企業のエグゼクティブであり現マーケティングコンサルタントであるマーク・バターフィールド氏は「コンサル企業が投資利益率を実際に証明してくれるような素晴らしい計画を見せない限りは、マーケターにとってはそれは賢い予算の使い方とはいえず、正当化することが難しい」と語る。

アドテクという難問

今年、マネージメントコンサルティング企業たちがプログラマティック関連のビジネスを追いかけているのは明らかだ。しかし長期的な視点で、アドテクからちゃんと投資に見合ったリターンを得るためには、ただ賢い人材を雇う以上のことが求められる。アクセンチュアは複雑かつ不明瞭なサプライチェーンにおいて、クライアントのガイド役として自らを位置づけている。彼らはサービスレイヤーの重要性を説いている。しかし第三者パーティのツールを使うのか、透明性に基づいた報酬モデルを開発しているのか、アドテク企業を買収するのか、透明性をどうやって獲得するかについて詳細は明らかではない。

プログラマティックに舵を取っているエグゼクティブたちだが広告主に対してどのようなソリューションを提供するのか、コモディティ化したメディア取引以上の新しいモデルについてはまだ決めかねているようだ。広告主たちはアドテクについて理解しようとしている。そのなかで、プログラマティックの仕組みを説明し、ブラックボックスに透明性をもたらすパートナーとして台頭するチャンスは存在している。「クライアントが理解できる言葉でアドテクのオプションを説明できているエージェンシーは多くない、と言っても間違いはないだろう」と語ったのは、元オムニコム(Omnicom)英国最高デジタル責任者であり、アイオテック・グローバル(Iotec Global)のCEOであるポール・ライト氏だ。

人材不足という認識

一方のエージェンシー側が、コンサル企業に対して自分たちが持っているアドバンテージとして何度もあげるのが人材だ。コンサル企業たちは今年、それに採用キャンペーンでもって対抗してきている。アクセンチュアはOMDからニッキー・メンドンカ氏を獲得した。マッキャンメルボルン(McCann Melbourne)のクリエイティブ、エイドリアン・ミルズ氏、ディヴィッド・フィリップス氏、マット・ローソン氏はデロイトデジタル(Deloitte Digital)のブランドクリエイティブとメディアチームに参加することになった。こういった経験豊富なエージェンシー出身の人材が加わっても、アクセンチュア・インタラクティブ(Accenture Interactive)やデロイトデジタルは大きなデジタル案件には適していないという雰囲気がある。ソレル氏は投資家に向かって人材におけるギャップについて強調した。彼によるとWPPはデジタル案件に関して、コンサル企業と直接競争してきているが、「勝敗の記録は一貫して強い結果を叩き出している」とのことだ。

デロイトデジタルの最高マーケティング責任者であるアリシア・ハッチ氏が米DIGIDAYに語ったところによると、デロイトでは新しいクライアントの獲得において彼らのサービスに対する認識が障害となっているそうだ。コンサル企業には監査をしてもらう、という考えを持っているクライアントがいまのところは多いと言う。リサーチ企業コンバージェンス(Comvergence)による、30のグローバルメディアと年間最低1億5000万ドル(約168億円)を支出するマーケティング・プロキュアメント責任者たちを対象に行われた最近のリサーチによると、広告主の15%から25%が定期的に、もしくは年に1回、コンサル企業に頼んでメディアバイイング戦略を客観的に評価してもらっているという。

ロケーション

ホールディンググループと比べてコンサル企業の社員数は多いかもしれないがグローバルクライアントにサービスを提供するという点では疑問の声もあがっている。たとえば中東、南アメリカ、そしてアジアに関して言えばコンサル企業は「事実上何もやれていない」とコンサル企業出身の業界関係者は匿名で語ってくれた。この人物によると、コンサル企業は複数の地域をひとつの中央ハブでまとめようとする傾向があるとのことだ。「その結果、中国マーケットについて話がしたいのにシンガポールにいるスタッフとミーティングをするはめになる。コンサル企業は広告とメディア業務に参入しようとしているが、安くあげようとしている」。

Seb Joseph(原文 / 訳:塚本 紺)
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