「クライアントは、いまだ『バイラル』を望んでいる」:あるソーシャルエージェンシー幹部の告白

よいものはすべて姿を消していく。ソーシャルなプラットフォーム上でのオーガニックリーチという無料提供品はもうない。これらのニュースフィードでオーディエンスを増やしたいと思っているブランドは、課金制サービスを使えと言われる。

業界人に匿名で本音を語ってもらう「告白」シリーズ。今回は、英国のソーシャルメディアエージェンシーの幹部に話を聞いた。

この幹部によると、多くのブランドは先ほど述べた冷酷で厳しい真実を理解していないという。オーガニックリーチについては、さまざまな媒体の記事で何度も繰り返し死んだ」と宣言されているにもかかわらず、クライアントはまだその魔法にかかっている。インタビューは内容を明確にするために少し編集してある。

――クライアントはいまだにオーガニックリーチに取り憑かれているという話だが、もっと詳しく説明してほしい。

2年前まで、オーガニックリーチは機能していた。それがソーシャルメディアの良いところだった。そのためのコンテンツを作成し、あとは自然に任せておけばよかった。だがアルゴリズムの変更によって、いまではそれが滅多に起こらなくなっている。ブランド側はまだその対応ができていない。できているとは言うが、我々のところへやってくると、月に何回かは「バイラルで広めたい」と言ってくる。こうすればバイラルで広がるという決定的な方法はないし、それはもはや持続可能なアプローチではない。

――でも、課金制はいやだと?

そう。業界にいる人間なら誰でも、無料で手に入るリーチなどないと知っているが、クライアントの考え方は数年遅れている。クライアントたちは、我々のようなエージェンシーに払う費用はすべてコンテンツ制作予算だと思っているので、「いままでタダで手に入っていたものに対して、これからは追加料金を払う必要がある」とは言いにくい。

オーガニックなコンテンツを投稿しても問題はない。それはコミュニティーを持続するために必要なのだから。だが、オーディエンスを増やそうとするときには、誰も見ないなら、コンテンツを作る価値はないし、広告費を払わずにそれを見る人はほとんどいないだろう。

――嫌がる理由はどこに?

費用を払って動画のプロモーションをしている場合も、そうは言えない。バイラルによる成功体験をもつクライアントは、お金が使われているなどと想像もしないだろう。彼らは、バイラルで広めることはまだ可能だと思っているが、そういうケースはごく稀だ。「アイスバケツチャレンジ」のマネゴトには、誰にも見てもらえない失敗作が膨大にある。

――広告素材制作プロセスから有料メディアを除外することの問題は?

オーガニックリーチのために作られたコンテンツは、既知の相手に対して話しかけるものだ。オーディエンスとの関係はすでに出来上がっているので、自己紹介はしなくていい。

だが、有料コンテンツの場合、ブランドに関する知識をもっている人は少ないと想定する必要がある。現在、面白い動画を作っているブランドは多いが、それがどこで見られるかはあまり意識していない。

コンテンツを作り、その後、それをどこへ向けて配信しようかと、ある時点から考えるようになる。それだと仕事は半分しかできていない。配信は広告素材制作プロセスの最前線だ。作ったコンテンツを見る人が誰もいないなら、クライアントも我々の力を十分に利用していないことになる。我々にとっても、せっかくの仕事に最高のチャンスが与えられなくなる。

――それがエージェンシーに及ぼす影響は?

コンテンツを作るエージェンシーと、それを配信するエージェンシーが別では、うまくいかないだろう。クライアントは指示書のなかで、クリエイティブエージェンシーと有料のソーシャルエージェンシーは競い合わせている。戦略が違うのだ。我々は、有料のソーシャルエージェンシーと異なる目標を実現した経験がある。これは良くないやり方だ。

GRACE CAFFYN(原文 / 訳:ガリレオ)
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