「男性たちは、自らがフェミニストだと勘違いしている」:元エージェンシー女性幹部の告白

エージェンシーたちは、表向きにはオフィスにおけるダイバーシティを推し進めている。だが、実情は異なるようだ。

匿名で業界の実態を正直に語ってもらう「告白」シリーズ。今回、クリエイティブエージェンシー出身のエグゼクティブの元女性社員が、いかに新興のクリエイティブエージェンシーたちは多様性の観点で、まだまだ努力が必要かを語った。彼女の言うところでは、究極的に男女間の不公平を正せるかどうかは、株主たちにかかっているという。

文章は読みやすさのために若干の編集を加えている。

――あなたが直近にいたエージェンシーの雰囲気はどんな感じだった?

男性社員たちは若い人材であっても、驚くほど大きな権限を持たされていることを、私は妙だと思った。20代前半で、なんのトレーニングも受けていないながらも、役割を任される若者たちがいる。プランニング、思考、戦略を台無しにしてしまうようなカルチャー、メンタリティが存在していた。

――男性と女性でどのような異なる扱いを受けていると思う?

クリエイティブプロダクトのキャンペーンがあったとしたら、会議室に16人の男性がいて、女性が1人だったりする。それでは視点のバランスというものがない。ミーティングにおける合意が「これは良いものになる」だったとしても、このプロダクトが女性向けになっていないことに気付かないのだ。戦略的にも誤った判断が、誰かに相談をすることもなく決定されている。こういった死角は、組織に女性がもっと存在して「これは本当の意味で女性の声とはいえない」と指摘することができれば、目に見えるようになる。

女性は真剣に取り合ってもらえず、権限も持てない。男性たちは公然と挑戦をすることが促されている一方で、女性が同じことをすると出世のはしごから外されてしまう。男性社員がミーティングで大声をあげ、クリエイティビティがあると見なされることがあっても、女性社員が同じように大声をあげると、厄介な問題になる。その結果、恐ろしく誤った判断が下されていく。多額の金も無駄になる。

――なぜ、そんな事になってしまっているのか?

男性社員たちは自分たちがすでにフェミニストだと考えているようだ。しかし、男としての特権をカジュアルに利用しているのが実態だ。どの世代も同じように学ぶステップを取る必要がある。女性はビジネスにとって有益な存在であることを経験から学ばないといけない。若い世代はそんなこと分かっている、と頭では思っているが、同じ会議室に入ってみれば、まだ1960年代と変わらない。

――性差別にまつわる現状は、古いエージェンシーと新しいエージェンシーとでは違っているのか?

歴史がありグローバル企業然としているエージェンシーたちは、長い時間をかけて組織内における女性の役割について話し合ってきた。ビジネスには異なる考え方や新しいスキルが必要であり、損益計算書を見れば、それが良い結果をもたらすということは分かっている。

若い人材に権限を与えすぎたビジネスは、まだその部分を解決していない。私の場合、私の評価はビジネスの成果ではなく、私より若い社員が私についてどう思っているかに基いて決められていた。彼らは私について賛辞を常に述べていたわけではないので、彼らからはそれほど好かれていなかったようだ。

――社会的には男女差別をなくすための取り組みがたくさん行われている。外から見ると変化が訪れているように見えるが

気付きというのは、すべて良いものだ。しかし、ミーティングにおける力関係を変えるのは、それよりもはるかに難しい課題だ。

――どうすれば良い? 女性人事の目標設定をするとか、ダイバーシティに関する数字の向上は効果的か?

それらが効果を生む可能性はある。しかし、それでは社内の者の考え方に影響を与えない。ここには2本のレバーが存在している。ひとつは組織が公に恥をかくことで考え方を改めざるを得なくなるか、もうひとつはビジネスが上手くいかなくなるかだ。

――責任はどこにあると考える?

株主たちはシニアレベルの女性社員が辞職するときに、ちゃんと質問をしなければいけない。なぜ、その女性社員では上手くいかなかったのか、理由をちゃんと追求しないと、いつか大きな問題へとつながるだろう。株主たちは長期的に維持できるビジネス、性別、人種の組み合わせについて考える必要がある。新しい世代を代表するクリエイティブエージェンシーだというなら数字で示せ、という話だ。

Lucinda Southern(原文 / 訳:塚本 紺)