「上司のイエスマンこそ評価されて出世する」:とあるベテランコピーライターの告白

ソーシャルメディアの役割が大きくなるにつれて、かつて尊敬を集めたコピーライターの市場価値は落ちてしまったのか。今回の「告白」シリーズでは、小さなエージェンシーで10年以上の経験をもつ、あるコピーライターに匿名で語ってもらった。何が変わったのか、そしてなぜ皆がみんな、真似のしあいをしているのか。

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――いまのエージェンシーにおける最大の問題とは?

私が勤めている小さなエージェンシーの経営者は、会社全体の戦略をもっていない。直近に出席したカンファレンスでのトピックが、当面、社内で共有されるテーマになったりする。

たとえば、2カ月ほど前にカンファレンスに行って、そこで性格テストについて話し合われたらしい。そしたら、我々の会社でも皆が性格テストを受けることになった。2カ月のあいだ、それが話題の的だ。いまではすっかり隅に押しやられているけれど。

ほかを見て、どうやって自分たちの会社を経営するかを決める、ということが起きている。自分たちが誰で、何が得意なのか、自分にちゃんと訊ねることなく、他所を見てばかりいる。

――小規模なエージェンシーはそのサイズを長所と見なすことがあるが。

私のエージェンシーは小規模なので、たしかに「大きいところじゃ早い仕事はできない」と説明することがある。しかし、それは間違っている。都合の良い解釈にすぎない。

大きさが何かを決定してしまうということはない。たとえ20人しか社員がいなかったとしても、全員のレベルが低かった場合、自分たちがベストだとはいえない。

大きいところは早い仕事ができないといっても、大きい会社ではクライアントに専念するチームが用意される。大きいところには大きいリソースがある。私の職場では、私が外出中はコピーが書かれることはない。サイズの小ささが、私の会社の強みだと考えるのは難しい。

――クライアントとの関係はどうなっているのか?

エージェンシーは、自分たちが実行していないことをクライアントに勧める。クライアントがブログをもっていることはもっとも重要なこととして提案するくせに、我が社のブログなんて、ほとんどないようなものだ。自分たちに対しては、もっとも重要なものだとは考えない。誰も読みやしない。クライアントがちゃんと信じられるものを勧めるというのは難しいんだ。

――けれど、クライアントはそれを求めているのでは?

クライアントは、合理的で説得しやすい判断を下したいと考える。クライアントのボスに対して「Facebookに載せたいのは知っています。けれど別のプラットフォームに載せるほうが良い」というよりは、「この予算はターゲティングされたFacebook広告に使います」と説得する方が楽だからだ。

データではそれが効果的じゃないと分かっていても、説得するのが楽だからそうする。一番効果的とは言えないかもしれない、けれど「Facebook広告を活用する」といって、クビになることはない。

エージェンシー内部でも同じことが起こる。流行りの言葉を使って、上司に同調することで評価されて出世する。違う意見をもっていたり、シニカルな視点をもっている人間は出世しない。上司たちに決して反対しない人間たちがエージェンシーのなかで一気に上に駆け上がるのを見てきた。そうやって自分の席を確保するんだ。

――入社当時の動機と入社後に知る内情に、ギャップがあるのでは?

私が一緒に働くデザイナーたちは、デザイン学校を卒業した者たちだ。芸術家にならない限りは、デザインの仕事は広告に使われることになる。ライターであればもう少し選択肢があるけれども、ほとんどの人間が映画業界で働きたくて広告に流れ着いている。映画がやりたければ、それに似た良いものというのが存在しない。広告やマーケティングがその代わりになるということはない。

私自身もそうだったけれど、若いクリエイターのなかに広まっている誤解がある。それはエージェンシーはすべてコマーシャルを制作し、有名人たちと付き合い、クライアントは途切れることなく現れて何億円という予算をつぎこんでくれるという誤解だ。

――業界に入って何を知る?

仕事をはじめて2週間で、映像はほとんど作らないし、ストック写真を使うばかりだし、何をするにも承認をもらわないとダメだと気づくはずだ。

――勤務時間は長い?

それは分からない。私はいつも9時5時だったし、深夜や週末まで仕事に明け暮れるということはない。それはある意味では良いことだけれど、いま私はシニア役職で、上に登ろうとしている。快適な生活がしばらく続いたけれど、自慢できるような仕事はそれほど多くない。1週間に40時間勤務して、予算に適した形で、たいして重要でないものを作っている。

スーパーボウルや全国放送のスポットに取り組めるのであれば、20時間さらに喜んで残業するだろう。快適だけど、たいしたことのない仕事をこなす、週40時間勤務と喜んで交換するさ。

Shareen Pathak(原文 / 訳:塚本 紺)