広告エージェンシーに勤務する新米ママの告白:「何もかも口先だけ」

エージェンシーは、多様性や受容に関して言えば軌道修正しようと懸命に努力しているものの、親になった従業員との協力については後れを取っているところが多い。育児休暇は、ほかの業界では注目の話題だが、エージェンシーは追いついていないように思われる、と従業員はたびたび嘆いている。業務の性質上、長時間勤務で予測不能な要求をされる仕事を維持するのは、不可能に近い。

業界人に匿名で本音を語ってもらう「告白」シリーズ。今回は、エージェンシーに勤務する新米ママに、出産後の職場復帰がどういう感じか語ってもらった。

なお、わかりやすくするため、以下の回答には編集を加えている。

――初めて妊娠してどんな感じだった?

予想よりも早いタイミングで妊娠した。よくある話だけれど、私は非常に幸運だった。まだかなり普通に働ける。たしかに疲れる。でも、妊娠が進むにつれて、新米ママとしてエージェンシーで働くとなると、厳しい制約があることがはっきりしてきた。

――どんな風に?

以前は、機会を求めて手を挙げることができたが、いまは機会を求められる。実際、エージェンシーでの労働時間について言われていることは、すべて事実だ。遅くまで働いて、我が子と過ごす生活をふいにする覚悟がなければ、機会が得られることはない。

――仕事量だけの話ではない?

エージェンシーの営業形態は、主な育児者である母親や父親、あるいは、育児の責任を分担する父親も受け入れるようにできていない。保育所に我が子を迎えに行かなければならない同僚男性がいる。彼らは、午後5時に退社しなければならない。そういう点は注目される。

――機会については?

非効率な点が多い。新しいビジネスに関するプレゼンがあるとする。正念場だ。エージェンシーはたいてい、2週間で企画をまとめる。そういう場合、担当者は夜や週末も働いている。プレゼンに関するミーティングは、午後5時、午後6時、午後7時まで続く。戦略がまだ立っていない段階でも、アイデアの見直しや却下が行われて、プレゼンに関するミーティングが午後10時まで続いたこともある。大混乱だ。

15人もミーティングに参加して、その全員が意見を口にするなんて、誰もそんなことは求めていない。1日中独りよがりな意見をひけらかす人など必要はない。

――ミーティング地獄だ。

エージェンシーで働いていると、1日中ミーティング漬けだ。普通の日の午後5時半や午後6時に、本格的なミーティングが予定されている。家にいる必要がなければ、それでもいい。だが、それだと都合が悪い人だっている。朝から晩まで自宅で子守りを雇う金銭的余裕がない親の場合は、なおさらだ。

――女性や多様性が再注目されている。それは、どれだけ役に立ってきた?

女性や有色人種の擁護なんて、何もかも口先だけだ。女性や有色人種の擁護はきわめて重要な構想だ。母親は、そのなかで大きな部分を占める。エージェンシーが母親や父親などの主な育児者に優しい職場でなければ、女性幹部が不足している現状は変わらない。公式な立場からは、そういう話が語られることなどない。だが、私や同僚など、女性のあいだではそう言われている。私たちは機会を恐れ、現在または将来、いかに両立させるか、不安を抱いている。

――女性は職場を去っている? あなたは今後どうするのか?

多くのエージェンシーは、たくさんの若手社員と数少ない年輩社員で構成されている。比較的年齢が上の女性のなかには、仕事を辞めるか、契約社員やフリーランスになるか、態度を決めようとしている人もいる。

――社風はどうか?

アドテク業界で読む物の多くでは、身を粉にして働くことが受け入れられ、奨励されている。それも事実だ。クリエイティブはいつも遅くまで残業しているが、実際にはワインを飲みながら座っているだけだ。夜遅くにメール返信する部下を褒め称えるマネージャーもいる。子育て中の従業員はそういうことをしない。時計とにらめっこしながら働いているふりをするためだけに、コンピューターに向かったりしない。母親たちは、夜遅くまでデスクに向かい、夜中にメール返信する者が褒められるそうした体制を怖がっている。不当な成功基準だ。

――従業員はどう対処しているのか?

エージェンシーで長年に渡って、午後5時に退社してから再びネットに接続し、寝る時間が過ぎても働いているほかの親の話を耳にしてきた。いつ休むのだろう? エージェンシーの世界は、顧客との関わり合いの目安であるかのように、働き過ぎなのを自慢する。

――報酬を請求できるからだ。

そのとおり。エージェンシーの従業員は、いつでも対応できるべきだと期待されているので。素晴らしいプレゼンの仕事が入ってきても、私が午後10時まで働けず、週末に出勤できないなら、その仕事を担当することはないのはわかっている。

エージェンシーは、新規のプレゼンのチャンスを追いかけている。誰もが過剰な仕事を与えられているので、勤務時間が長くなる。でも、予測不能で時間を充てることができないので、新米ママの私はその仕事に参加できない。新米ママにはプレゼンの仕事をする余地がない。

ミーティング地獄で、忌々しいミーティングの時間を中心に物事が運ぶので、大混乱だ。せめて、はじまるとわかっているキャンペーンに取り組むのであれば、合理的に時間を割り振りできるが、これでは無理だ。担当者として名乗りをあげられない。子どもができると女性が役割を変え、事務方の仕事を引き受けるのは、それが理由だ。

新規ビジネスやクリエイティブの仕事は常軌を逸している。だが、魅力的な仕事ではある。もっと多くの機会が得られる仕事だ。

Shareen Pathak(原文 / 訳:ガリレオ)