「惰性と馴れ合い、変われないデジタル広告業界」:とある匿名メディアバイヤーの告白

いま、デジタル広告業界でもっともフラストレーションを募らせているのはメディアバイヤーかもしれない。業界人に匿名で本音を語ってもらう米DIGIDAY「告白シリーズ」最新記事では、ある大手エージェンシーにおけるベテランのメディアバイヤーに、クライアントの意識改革の難しさについて話を聞いた。

広告業界で、いま一番不満に思うことは?

自分の場合、いい仕事を阻む障壁の最たるものは、デジタルプランニングだ。デジタルは毎回同じプランを繰り返すだけになっており、それでいいわけがない。我々の仕事といえば、基本的に「前回と同じもの」にアップデートを施すだけ。自分のように、業績を上げて認められたい人間にとっては、辛い状況だ。

プログラマティック広告が問題を悪化させた?

そう。バナー広告がダメダメなことをクライアントが知らないわけじゃないが、誰もあえてそのことを口にしない。みんな「同僚がバナー広告を見たと言っていたから、ちゃんと機能している」で済ませている。「これは本当に役に立っているのか」と声を上げて、藪蛇になったら困るのだろう。

それは誰の責任? エージェンシー、それともクライアント?

両者の馴れ合いだ。クライアントが社内的に売り込んでいるのは閲覧数とかクリック数とか、本質的ではない指標だ。エージェンシーはそこから逆算してプログラマティックにかける費用を弾き出す。こうした指標が本当に成功指標として意味があるのか、誰も追求したがらない。クリック数は企業の業績ではないのに、そこで満足して次のステップに進もうとしないのだ。

次のステップとは?

いままでのプランを捨てて、クライアントを新しい可能性に導くことだ。実現には意識改革が必要だが、たとえば属性モデルを構築するなど、新しい試みをする心の準備が業界にはできていない。特に、旧態依然の考え方がはびこっている大手エージェンシーでは、無理難題と言っていい。

クライアントの意識改革は、なぜそんなに難しい?

複数のエージェンシーと付き合いがあるクライアントの場合、クライアントだけでなく、ほかのエージェンシーの意識改革も必要になる。我々はメディアエージェンシーだ。クリエイティブエージェンシーの意識を変えることは難しい。クライアント側では、CMOを説得するだけではダメだ、CEOレベルにわかってもらわないと。

もうひとつ、消費財メーカーは、テレビ広告から離れられないでいる。投資額Xに対する見返りYがある、という公式が1956年に証明されたとかで、みんなこの公式を聖書のように大切にしている。ブランドマネージャーもこの公式にしがみついており、進歩的なCMOにさえ変えることはできない。「これがデジタルで使える同様の公式です」と示すことができないのは、我々エージェンシーの問題ではある。

クライアントを納得させるためにターゲット広告で軽いごまかしをやると聞いたけど?

クライアントは、広告が見えてこないと不満を言ってくる。自分にターゲットされていない広告でもだ。仕方ないから、クライアント本社があるロケーションや、クライアント自身にターゲットした広告を出す。TVとデジタルの違いがわからないクライアントには本当に困っている。クライアント上層部で、Facebook以外のソーシャルメディアを使っている人はほとんどいない。デジタル広告を目にすることがないから、デジタル広告が存在していないかのような物言いをする。

あるクライアントに対し、我々はFacebookの新サービス「スポーツスタジアム(Sports Stadium)」で大きな成功を収めた。わずかな予算で大きなリーチを実現したのだ。しかし、彼らの見方では、「スポーツスタジアム」は失敗だったということになっている。必然的に、社内全体での見方が、現実とは裏腹に、あれは失敗したということで落ち着いてしまう。

Shareen Pathak(原文 / 訳:片岡直子)
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