「業界はバナー広告に効果があるように見せかけてきた」:メディアエージェンシーCEOの告白

主にアドブロック普及への反応として、オンライン広告の検証が行われるようになった。アドブロックの使用は欧州全体で増えてきており、今月はじめにIAB/YouGovが発表した数字によると、英国の成人人口の22%はオンラインアドブロッカーを使用しているという。パブリッシャーにとっては、またもや頭痛が再発するようなニュースだが、安堵のため息を漏らした人もいる。

業界人に匿名で本音を語ってもらう米DIGIDAYの「告白」シリーズ最新版では、「クリックどころか見られもしないディスプレイ広告フォーマットになぜ無駄金を使うのか?」と主張する、とあるメディアエージェンシーCEOに話を聞いた。同CEOは、クライアント側・エージェンシー側の両方で、デジタル広告業界17年の経験を持つ。

以下、取材で得た談話を要約して紹介する。

広告業界の現状で、一番イラつくことは?

「ディスプレイバナー広告は死んだ」という言説。生きていたことがないものを死んだと言われてもね。業界としては、バナー広告には効果があるということにしておかないと困るんだ。ディスプレイ広告で食っている人間、売却・買収ネタにしている企業、それ用に技術を開発している会社などが、ものすごい数にのぼるからだ。スタンダードなディスプレイ広告は役に立つという前提のもとに、いろいろなものが出来上がってしまっている。

使えるディスプレイ広告もありますよね?

すべてのディスプレイ広告が同じというわけじゃない。FacebookとかGoogleのディスプレイ広告に関して言えば、クリーンなエコシステムが存在している。しかし、フラウドやビューアビリティについて注目すると、複合的な問題になっていることがわかる。つまり、アドエクスチェンジとかネットワークに出回る、プログラマティックその他の方法で購入される標準的なディスプレイ広告のことだ。こうした広告がクライアントの役に立っているという証拠は見たことがない。

売り上げに貢献にしたことなど無いに等しく、明日こつ然と消滅しても消費者は全然気にも止めないであろうものが56億ドル(約6300億円)市場だなんて、ほかではあり得ない現象だ。それにもかかわらず、ディスプレイ広告にはそれだけのキャッシュバリューがあるとされているのだ。

プログラマティックトレーディングが問題に一役買ってる?

オンラインディスプレイ広告のプログラマティックは、ゴミにメッキを施すような仕事だ。我々の業界は、本質的に壊れているものを、洗練されたものであるかのように見せかけてきた。どういう買い方をしようと、どんな言葉で表そうと、誰も反応しない広告に何の意味がある? キャッシュで買おうとカード決済で買おうと、ゴミがゴミであることには変わりない。

デジタル広告テクノロジーについてのご大層なプレゼンをしたかったら、いくらでもすればいい。でも、実際よりすごいものであるかのように持ち上げた結果、これをやらねば優秀なマーケターにあらず、みたいな風潮になってしまったんだ。いろんな意味で、実際にはその逆が真実だ。根本的に理解できていないものを購入するマーケターが優秀だとでも?

ディスプレイ広告はいい仕事をしていると主張する人に言いたいことは?

経済的指標を示すモデルで、ディスプレイ広告がマーケティングプランに入れるべきものとして際立つ理由は、ディスプレイのリーチが実に広く、大量のcookieを落としているというデータが示されるからだ。

しかし、実際にどんな影響をもたらしているというのだろう? それがわからないから、成果が確定できないし、テストをしなければディスプレイ広告の役割がはっりしない、と言われる。そのうえで、ディスプレイ広告の役割が本当にはっきりしているという人には、疑問を抱かざるを得ない。結局のところ、業界が指標を粉飾して効果があるかのように見せているのだから。

そのことをクライアントと話した?

そう、話してみた。おかしなことに、クライアントの多くは同意してくれる。彼ら自身も、ディスプレイ広告が有効だという証拠がないことをわかっていながら、ディスプレイに広告予算を使い続けている。デジタルキャンペーンだけを実施している場合、メインのオプションとしてディスプレイをやらなければ、予算の使い道に困るのだろう。

ディスプレイ広告の代わりに、何に予算を割くべき?

アドブロックがゴミを淘汰してくれた後に残るもの。業界に必要なのは、ディスプレイよりも数がずっと少なくて、効果のある広告フォーマットだ。フェアな例じゃないけど、テレビのコマーシャルが効果的なのは、スクリーン全体を乗っ取るし、フォーマットがひとつしかないからだ。

IABウェブサイトをみるといい、あほらしい数の四角(広告枠)にあふれている。全員がこれを使うっていう、共通貨幣としてのフォーマットがひとつかふたつあればいいんだ。デジタル動画もクリーンなエコシステムになっている。それゆえ、よりインパクトがあるフォーマットだと言える。

(※編集部註:本記事に対するメディアエージェンシーの役員による反論記事はこちら

Jessica Davies(原文 / 訳 片岡直子)
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