「マイクロインフルエンサーは最大のペテンだ」:あるインフルエンサーマーケティング担当幹部の告白

インフルエンサーマーケティングが、成長に伴う苦しみを経験している。支払いレートと適切な情報開示はまだメチャクチャなままだ。ブランドの期待は御しがたい。20歳そこそこでインスタグラムで有名になったお金のある子どものなかには、一緒に仕事ができそうにない者がいるのだと想定しておくのが安全だ。

だからといって、この業界がなくなろうとしているというのではない。タップインフルエンス(TapInfluence)とニールセン・カタリーナ・ソリューションズ(Nielsen Catalina Solutions)が実施した2016年の調査によると、インフルエンサーマーケティングのROIは、従来のブランドマーケティングと比較して11倍も高いという。

匿名を条件に業界の裏側を語ってもらう「告白」シリーズ。今回は、この7年間に業界の両側を体験したインフルエンサーマーケティング担当の幹部に、この分野をまだむしばんでいる問題について話を聞いた。回答は、わかりやすいように編集を加えてある。

――ブランド側からはじめよう。ブランドからインフルエンサーへのアプローチは、いまどうなっている?

幅があって、具体的な戦略をもつようになったところがあるかと思えば、その対極には、「とにかくインフルエンサーにうちの製品について語って欲しい。予算はこれだけ出す」というようなブランドもある。大衆を相手にする大きなブランドには、非常に細かく、一言一句までコントロールしようとするところもある。すべての言葉をコントロールするのなら、自分の言葉でフォロワーを構築した人たちと仕事をする意味があるのかと思うよ。

――ブランドはまだインフルエンサーの価値に疑問をもっている?

ブランドの上層部たちがようやくこのチャネルを真剣に考えるようになったと見ている。そして選択肢が増えた。数年前はトップインフルエンサーの限られたグループがいるだけで、誰もが同じ人間たちと仕事をしたがり、市場はインフレになった。レートはうなぎ上りで、ブランドは慌てた。いまは、市場でインフルエンサー間の競争が高まっていて、これは良いことだと思う。ブランド側の選択肢が増えたので、一部のインフルエンサーが、インスタグラムの投稿1件に10万ドル単位のトンデモナイ金額を請求できるということはなくなった。

――マイクロインフルエンサーの登場が、何十万ドルもする投稿を駆逐したのか?

マイクロインフルエンサーについては、とても言いたいことがある。基本的には、この2~3年で無数に登場したインフルエンサーマーケティングのプラットフォームがはじめた最大のペテンだよ。100ドルのギフト券で何でもやるような、極めて微力なインフルエンサーを起用して仕事をさせるほうがずっと簡単だというわけだ。こうした「マイクロインフルエンサー」たちのエンゲージメントの高さをみんな語っているけど、10人しか「いいね」をしない投稿のエンゲージメント率が20%だろうと知ったことではない。まったくもってあてにならない弱小インフルエンサーを数百人抱えたネットワークと、ブランドが仕事をしていくサイクルがはじまるというだけだ。つまり、質を失っていくということでもある。全員がそのブランドに適しているということはあり得ない。

――それで、誤解を与える情報がたくさん出回るなか、インフルエンサーに払う額をブランドはどうやって把握しているのだろう?

レートは大きく動くことがあるから、自力でインフルエンサーと仕事をしているブランドは、いちばん有利な価格をはじきだすのが難しいかもしれない。インフルエンサーたちは、一緒に仕事をしたいブランドや、親近感を持っているブランドの場合は低い報酬を受け入れることがある。また、タイミングにもよる。インフルエンサーに仕事があまりないときに接触すれば、ほかに5本の仕事が待っているような忙しいときにアプローチした場合よりも有利なレートになるだろう。株式市場のようなものなのだけど、ブランドは必ずしもこれをわかっていない。とはいえ、市場でバランスがとれるようになり、マーケットプレイスが拡大したいまは、適切なレートが請求されるようになってきている。

――インフルエンサーのわがままにはどのように対処している?

参入して1年もしないうちに急成長する若い才能がまだ多いのがこの業界だ。20歳にしてとつぜん、数百人のフォロワーを獲得し、ブランドが大金を出すようになったという場合は、たいてい、そうした状況への準備がまったくできていない。また、ブランドへの対処法や業界の仕組みの教育に、エージェントが時間をかけていない。

それはもう惚れ惚れとするよ。インフルエンサーたちは、スケジュールを厳守するといったマーケティング業界では当たり前のことを、いまも気にしていない。「あのね、このインスタグラムは明日投稿したいんだよね。今日はそんな気分じゃない」と、インフルエンサーは言うだろう。マーケターからすると悪夢だ。キャンペーンが1日遅れる。クライアントとエージェンシーに状況を伝える必要がある。突発的な危機だ。

――クライアントに準備させる十分な仕事を、エージェントがやっていないと?

ああ、まったく。それがエージェントの価値なのに。そうなんだ。エージェントは取引を取捨選択しているけど、本当にやらないといけないのは、クライアントの教育と適切な方向への誘導だ。クライアントに連絡をつけることすらできないエージェントと仕事をしたことがある。すべてがスムーズに進むようにする手配を、ブランドはエージェントに頼んでいるのだから、そうなるとすべてが疑問に思えはじめる。特に若くて経験がないインフルエンサーの場合は、インフルエンサーに責任をもたせると、エージェントがクライアントを安心させなければいけないはずだ。

――素行の悪さが理由でインフルエンサーをプラットフォームのブラックリストに入れたことはある?

よくない素行の記録がある人は、特にうるさいクライアントや大きなキャンペーンのクライアントには提示しないようにしている。クライアント自身でも気がつくから、悪い評判がインフルエンサーのキャリアを損なう恐れがあるのはたしかだ。ブランドからすると、数だけではない。同じクライアントと仕事をしたときに、膨大なフォロワーを抱える人物が最低限の成果に終わり、一方で、フォロワーの数では劣る人がそれを上回る成果を上げることもある。すると、そのクライアントが次に仕事をしたいと思うのは誰か。インフルエンサーにはこれをもっと考えて欲しい。自分たちはクライアントにサービスを提供しているのだと。

――注目度の高いブランドアンバサダーが、FTCの情報開示ルールに従っていないことで叩かれているのをよく目にする。ブランドとインフルエンサーはもっと慎重に事を運ぶべきなのでは?

情報開示に関しては、実際には行きすぎがあるのではないだろうか。気を悪くしないでほしいのだが、報道は情報開示に関して、一部の人を、魔女狩りを思わせるようなところまで追い詰め、打ちのめしていると感じる。あるブランドとの「仕事」や「提携」だと言ったところで、なぜ誤解につながるということになるのだろうか。短いコンテンツのひとつひとつに、見苦しいハッシュタグと長い情報開示が必要な理由などあるだろうか。最近の消費者は十分に賢いから、インフルエンサーが生活のためにやっていることだとわかっている。我々はこの事実を踏まえて、ブランドやインフルエンサーをまるで違法なことをしているかのように罰するのをやめる必要がある。情報開示に創造的自由というものはないんだ。

――インフルエンサーが多すぎると意見はある?

インフルエンサーという言葉が乱用されているのはたしかだ。ケンダル・ジェンナーはインフルエンサーではない。著名人だ。また、インスタグラムでフォロワーが5000人いるからといって、インフルエンサーを自称してはいけない。このように、インフルエンサーといってもピンからキリまでいる。フルタイムで活動するプロのもっとよい定義があればいいのだが。片手間に趣味としてやっている人は、いい趣味ではあるけど、プロのインフルエンサーではない。

Hilary Milnes (原文 / 訳:ガリレオ)