「エージェンシーは自分たちのブランドを作っていない」:エージェンシー 責任者の告白

昨今、メディアエージェンシーでいることは厳しい。

今回の「告白」シリーズでは、さまざまなエージェンシーを渡り歩いたコミュニケーション部門の責任者に、自社製品の価値を疑っているマーケティング担当者から、こびへつらうような的外れ感まで、エージェンシーが自分たちを売るのが、下手すぎる理由を聞いた。

なお、以下の回答には編集を加えている。

——エージェンシーでの最大の課題は?

エージェンシーの企業マーケティング部門への信頼とサポートの欠落。売上と最終損益にマーケティングが与える影響について話すエージェンシーはいるが、話す内容を実践しているエージェンシーはごくわずかだ。企業規模を考えれば、実践に移す予算がないのは明らかだ。

——いまネット広告の信頼性が問われている

まさにその通りで、私が企業のマーケティングが重要だと思う理由もそこにある。大手エージェンシーやコンサルタント企業からあらゆる企業やその親会社まで、競争が激化しているのは、差別化されたブランドを必要とする競争がごまんとあるからだろう。日々チーフマーケティングオフィサー(CMO)に提案をしている経験から言えば、エージェンシーを知らない場合や、聞いたことがない場合、そのエージェンシーからの提案はいらないのである。彼らは自分がやっていることを把握し、自分が最先端である自覚を持つため、ある種の自信を植え付ける必要があるのだ。

——さきほど予算の話が出たが、その使い道はマーケティングではない?

カンヌ国際映画祭やCES(コンシューマー・エレクトロニクスショー)など、安定した興行が見込める話題のイベントに「出席」するための経費といった類のことに予算が割かれている。エージェンシーは航空券やホテルの費用をオーバーに示している。カンヌの市長と一緒にいることを誇りに思っているCEOがいることを私は知っている。だから、クライアントに認めてもらうために、多くのエージェンシーがこういったイベントに参加する必要があると考えているのだろう。もちろん、市場の多くの人に存在していること、仕事をしていることを知ってもらうためだ。ただ、注目を集めるのはかなり難しい。

——エージェンシーが自分たちを売り込むのに苦労している理由は?

製品の性質である。製品自体が良くないのだ。徹底的に差別化されたストーリーを持つブランド最高の製品を考えてみてほしい。それこそまさにマーケティングをやりやすくする製品である。誰もがそのことに気付いていながら、誰も自分たちが何をしているかわかっていないエージェンシー業界では、自分たちが基本的に名前とWebサイトが書かれたボイラープレートだということを知るに至る。これは非常にまずい。なぜなら、いま広告主は、ブランドセーフティなのか、何なのかはわからないが、とにかく最高のものを得るためにどのような方法で割増費用を支払うべきかという問題に直面しているからだ。差別化されたエージェンシーブランドならばこの問題の答えがわかるだろう。

——エージェンシーでいることは、イメージを売るということなのか?

エージェンシーには、おしゃれなものやヒップスター(メインストリームにとらわれず独自のトレンドを追及する人)と共通する要素が山ほどある。Webサイトがおしゃれで、オフィスもおしゃれ。以前勤めていたエージェンシーの本社には、タッチスクリーンの壁があった。近くに行って、目の前に座って、「超かっこいい」と言わせてしまうような壁である。ところが次の瞬間、「何のためにこんなものを設置したんだ? このくだらない壁をタッチしている自分はまぬけなのか?」となる。だが、それはイメージなのである。トライベッカ(ニューヨークの「おしゃれ地区」)やダンボ(ニューヨークの「トレンディな地区」)にオフィスを構えたい人が多いのも同じ理由だと思う。ブルックリンにオフィスがあれば、ヒップスターの称号を得られる。

——相性の確認のようなもの?

実際に会ってチームのいろいろな方に挨拶するのは、ブランド形成にとって実質的なチャンスである。完全に形だけの挨拶ということはなく、クライアントから「こんなアイデアがあるなら、直接具体的な話を聞かせてくれ」と言われることがある。まったくの嘘を提案することはできないが、何かクリエイティブなことをでっち上げて、「食物連鎖」の上層と下層にいる結果を出せる適切な人を見つけ、人間関係を築く必要がある。

——はったりをかますということ? 失敗については抽象的に話すが、認めることはできないと?

おっしゃる通り。エージェンシー業界ではしょっちゅうあることだが、仕事をしないことやろくな仕事をしないことについて話すことができるとしたら、仕事に影響が出るだろう。この業界は臆病なのだ。起業家的な失敗のアイデアが受け入れられるべきだという環境で働いた経験はない。そんなのは、はったりに過ぎない。総意によって業界全体が麻痺していて、変化の速度は遅い。だから、エージェンシーは的外れになるリスクを冒すのだ。そして、その理由のほとんどが、エージェンシーに説得力のあるブランドがないからだ。

Shareen Pathak(原文 / 訳:SI Japan)