なぜ C・キャパニックには、スポンサーがつかないのか?:NFLの人気者がブランドに無視される理由

男性向けファッション・カルチャー誌『GQ』の2017年「メン・オブ・ザ・イヤー」号の表紙を飾ったのは、いまアメリカで一番の話題となっているコリン・キャパニックだった。2013年にはクオーターバックとしてサンフランシスコ・フォーティナイナーズをスーパーボウルまで導いたキャパニックは現在、Facebookやインスタグラム、Twitterで合計約500万人のフォロワーがついている。

しかしNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)の試合前の国歌斉唱で、人種差別や警官の暴力行為に抗議して起立を拒否したために物議を醸したキャパニックは、2015年のシーズン以降、大手ブランドの大規模キャンペーンに起用されたり、パートナーシップを結んだりといった実績がない。

「コリン・キャパニックはいまもっともパワフルな著名人のひとりだが、多くの人にとっては、見方が両極端にわかれるスポーツ選手でもある。彼の信念に賛同するか、反対するかのどちらかだ」。こう指摘するのは、ブランド&マーケティングコンサルタント会社プロフェット(Prophet)で最高業績拡大責任者(CGO)を務めるスコット・デイビス氏だ。

失ったスポンサーたち

2013年のスーパーボウル後、キャパニックはマクドナルド(McDonald’s)やビーツ・バイ・ドクター・ドレ(Beats by Dre)、ジャガー(Jaguar)、エレクトロニック・アーツ(Electronic Arts)、マッスルファーム(MusclePharm)といったブランドとパートナーシップを結んできた。2015年までにエンドースメント契約を通じてキャパニックが稼いだ金額は、300万ドルを下らない。だがその後、これらのスポンサーのコンテンツにまったく登場していないのも事実だ。

エレクトロニック・アーツのスポークスマンによると、同社は2013~2015年にかけてビデオゲーム『マッデンNFL』のTVコマーシャルにキャパニックを起用したという。しかし2016年以降に起用を止めた理由については明らかにしなかった。キャパニックは今年、NFLチームとの契約も交わしていない。2010年以来NFLのオフィシャルスポンサーを務めるパパ・ジョンズ・ピザ(Papa John’s Pizza)は、「選手の抗議行動がピザの売上低迷を引き起こした」として、試合でのブランド広告を一部取り止めにした(とはいえ、キャパニックに対する見方は変化しつつあるようだ。ブランドウォッチ[Brandwatch]によると、オンライン版GQのリリース前日、インターネット上でのキャパニック評は否定的な意見が62%だったが、翌日以降は肯定的な意見が81%に跳ね上がったという)。

キャパニックがスポンサーを失ったのは、一部のブランドがコーズマーケティングを採用し出した時期に重なっている。たとえばスターバックス(Starbucks)やAirbnb(エアビーアンドビー)は、移民問題に焦点を当てたコーズマーケティングを展開した。また、アイスバケツチャレンジのようなバイラルは、 社会貢献で名を売ろうとするブランドの増加につながった。調査でも、消費者は自分と主義・主張が一致するブランドから購入する傾向が高いことが分かっている。

理想的なアンバサダー

とはいえキャパニックは、ある種のブランドにとっては理想的なアンバサダーたり得る。彼の言葉やイメージの力強さを考えれば当然だろう。「コリン・キャパニックの意見は軋轢を生むこともあるかもしれない。だが彼には信念がある。何らかの信念を持っているブランドは、消費者の心や気持ちをつかみ、ロイヤルティを獲得できる」と指摘するのは、インフルエンサーマーケティング・エージェンシー、クレバー(Clever)の共同創業者でCIOのクリスティ・サミス氏だ。先のデイビス氏も、スターバックスやアバクロンビー&フィッチ(Abercrombie & Fitch)、アーバン・アウトフィッターズ(Urban Outfitters)といった明確なスタンスを打ち出しているブランドなら、「キャパニックのスポンサーとして違和感がない。これからは彼らのようなブランドの時代だとアピールできる」と語っている。

マーケティングエージェンシーのGYKアントラー(GYK Antler)でブランドマーケティングを担当するルーク・ボナー氏は、キャパニックのスポンサー候補として、ワークアウトブランドのTRXのように退役軍人が運営するブランドを上げた。「国歌斉唱の際の抗議は軍に対する侮辱ではなく、あくまでマイノリティへの社会的不正義に対するものだと印象付けられる」からだという。

ナイキ(Nike)などのブランドをクライアントとして抱えるデザインエージェンシー、フェイク・ラブ(Fake Love)で新規事業開発担当ディレクターを務めるサム・ユエン氏はキャパニックの今後について、自身のファッションブランドを立ち上げる、リーバイス(Levi’s)のような企業と組んでブランドを展開する、といったアプローチがあるのではないかと語る。リーバイスは同性婚をサポートする姿勢を打ち出しており、社会の規範に逆らうことを厭わないとみられるためだ。「人は、ファッションを通じて自分のなかの反抗精神を表現したがるものだ」。

ユエン氏は、Amazonのようにあらゆる層をターゲットとする有名ブランドや、フォード(Ford)のように(古き良き)アメリカを体現する企業は、キャパニックに合わないだろうとしている。キャパニックの起用は、「警官の暴力行為に対する抗議行動を金儲けに利用するブランド」という印象を生みかねないリスクもある。

キャパニックの本心

キャパニック自身、大手ブランドとのパートナーシップは望まないかもしれない。国歌斉唱ではじめて起立を拒否したとき、彼はブランドのスポンサーシップを失うことを恐れているようには見えなかった。インタビューでも次のようにコメントしている。「ブランドがNFLのスポンサーを降りようと、私とのエンドースメント契約を切ろうと、私は正義のために戦う」。実際、キャパニックは最近、複数の小規模なブランドとタッグを組んでいる。サミス氏はその一例として、キャパニックとサンフランシスコの小売企業シュー・パレス(Shoe Palace)のコラボレーションを上げた。このコラボレーションでキャパニックは、法との向き合い方を子どもたちに教えるために自身が立ち上げたプログラム「ノウ・ユア・ライツ・キャンプ(Know Your Rights Camp)」のロゴ入りTシャツの販売を行っている。さらに『GQ』の撮影向けに、キャパニックはパイヤーモス(Pyer Moss)とのコラボTシャツをデザインした。警官による暴力行為の多くの犠牲者たちの名前がデザインされたTシャツだ。

ブランディングエージェンシーのランダー(Landor)でCSOを務めるトーマス・オーダール氏は、次のように語った。「フォロワーはキャパニックを信念の人だと考えている。そうした評判を金儲けに利用すれば、かえって裏目に出るだろう。売名行為だと見なされる恐れもある」。

ILYSE LIFFREING(原文 / 訳:SI Japan)
Image courtesy of GQ