「テレビ広告のプログラマティック化、障害は業界自身」:テレビ関係のメディアバイヤーによる告白

プログラマティックTV」に注目が集まっている。デジタル広告業界が広告を自動化したように、いずれテレビネットワークも広告主と協働し、広告を自動化するという考えだ。しかし、実際はさまざまな問題が待ち構えている。

匿名で業界の裏話を正直にしてもらう「告白」シリーズ。今回は、テレビとデジタルメディア・バイイング・エージェンシーで働く、メディアバイヤーに話をしてもらった。一体何が、プログラマティックTV実現の障害となっているのだろうか。

以下はその会話からの抜粋だ。読みやすさのために若干の編集を加えてある。

――プログラマティックTVはどれくらい現実的なのか?

プログラマティックTVは、ここ最近のメディア業界における一番残念な話題だ。「もう少しで可能」「ほとんど現実となっている」と言われ続けて、かなり長い時間が経ったいま、クライアントとその話をすることはもうない。実際に現実の物となるまでは、ちゃんとした話として、話題にできない。

しかし、摩擦は巨大だ。プログラマティックTVが何であるか、決まった定義すら存在していない。話題にあがるときの半分は、だいたいが何をもってプログラマティックTVと呼ぶのか、という話に終始する。レガシー側がもっている防御反応のようなものだ。話をしようとしたら、それが何であるかで時間の半分を使ってしまう。

プログラマティックTVでも良いし、アドバンスTVでもいいし、アドレッサブルでもいいし、呼び方は何であれ、データを使ってほぼリアルタイムで広告購入を行うものであれば、私にとってはプログラマティックTVだ。

――レガシー側がプログラマティックTVを実現するための一番の障害になっているということ?

私のエージェンシーのテレビ担当は(プログラマティックを)嫌っている。というのもデジタルに脅威を感じているからだ。ことあるごとに、プログラマティックTVはまだ実現できないと、クライアントに言っている。「試験的な運用のなかに面白いものもあるけど、ちゃんと完成するまで待つべき理由は、コレとコレとコレとたくさんあります」という具合にだ。またテレビ側の人間が在庫をプログラマティックに入れないよう共謀しているような気がしている。

――共謀? なんでそんな事をするのか?

プロダクトを直接売ることでよりお金を生み出そうとしている。すでにひとつの方法でお金をちゃんと生み出せるのであれば、なぜそれを変える必要があるのか? それが摩擦を生み出す理由だ。お金が新しいところへ流れていかない。

――テレビ業界全体に比べて、あなたはプログラマティックTVに賛成しているように思えるが。

この時代、テレビ業界に身を置いていて、デジタルのシステムについて学ぼうとしていなかったら、業界を去ったほうがいい。テレビはいまや、ただのスクリーンのひとつにすぎない。ちゃんとすべてが機能するようにしたいのであれば、あらゆるスクリーンに関してシステマティックにリサーチ、計画、購入、最適化、そしてレポートができるようにならないといけない。それは業界で一緒に実施しないといけない。

――しかし、データと自動化に基づいたツールを開発していると言っているネットワークもいるが?

自分たちでシステムを作っているネットワークの多くは、プロセスをコントロールできるようにしておくため、また特別なセールスポイントにするために開発している。しかし、これだと広告ネットワークのレベルにまでしか発展しない。

私が考える理想は、ひとつのプランニングツールにログインして、オーディエンスの規模を選び、スクリーンの種類(スマートフォンだとかタブレットだとか、テレビだとか)を横断する形で、プログラマティックに購入できるようになることだ。プログラマティックを使えば、異なるオーディエンスに対して、異なるコミュニケーションをすることが、同時にできるようになる。スケールも可能だ。しかし、テレビはその枠組みの外側にいる。そのためデジタルとテレビを比較することができない。

――変化は起きているのか?

起きないということはあり得ない。私が不満に感じているのは、それがすでに起きているべきだからだ。現時点で、少なくともテレビ広告の25%は、プログラマティックに購入されているべきだろう。しかし実際は、たった1〜2%程度。テレビ広告に入ってくる700億ドル(約8兆円)のうち、20億ドル(約2300億円)くらいがプログラマティックに取引されている。

ビデオ・オン・デマンドを例に見てみる。ダイナミックな広告挿入はこれ以上ないほど普及している。テレビへ補助的に付けるデバイスがスマートになったいま、特にだ。テレビでやらない理由はやりたくないからだよ、まったく。

――誰がその変化のリーダーとなるのか?

プログラマティックを導入したことで、収益を大幅に伸ばす会社が現れたらだな。それがきっかけで、シフトが起きるだろう。Facebookがモバイルに入っていき、効率的にマネタイズしたのと比べると良い。あれによってモバイル広告が一気に上のレベルに引き上げられた。マネタイズはモバイルで費やされる時間の長さに基いて行われるようになるだろう。

最終的には、いま現在起きている業界の統合によって、変化が強制的に起こされるだろう。AT&TとディレクTVやベライゾンといった企業だ。ベライゾンはAOLのスタックを使えば所有しているテレビのアセットをすべてプラットフォームに統合してしまうことができる。こういった企業が業界に変化を起こすだろう。

Sahil Patel(原文 / 訳:塚本 紺)