たった48時間で、チョコバーの動画広告を制作したBBDO:ユーチューバーの作り方を参考に

ほとんどの広告キャンペーンは、企画書をクライアントに複数回提出し、じっくりと時間をかけてコンテンツ制作にとりかかるのが常だろう。しかし、ニューヨークに拠点を構える、WWP傘下のグローバル広告代理店BBDOは、アメリカの食品製造企業マース(Mars)の人気商品「Twix」チョコレートバーのために制作した動画を48時間で完成させた。

2015年10月、BBDOはYouTubeとパートナーを組み、社内限定の「クリエィタソン(Create-a-thon:クリエイティブとマラソンを組み合わせた造語)」コンペを実施。このコンペでは、世界各国に拠点をもつBBDOの各国におけるクリエイティブチームが、マース社の動画コンテンツキャンペーンのために競い合った。

参加したのは、ブラジル、コロンビア、フランス、ドイツ、イギリスとアメリカのBBDOのクリエイティブチーム。マース社が展開しているキャンペーン「left Twix vs. right Twix(Twixのパッケージには2本のチョコレートバーが入っていて、どちらのチョコレートバーが好きかを決める内容)」をテーマに、グローバル展開するための動画を制作した。

従来の制作方法へのアンチテーゼ

それぞれの動画は、ロンドン、ロサンゼルス、ニューヨーク、サンパウロにあるYouTubeのプロダクションスペースを利用して制作。この実験的なコンペは、従来型のクリエイティブ手法に対して、コンテンツをより迅速に制作するための挑戦といえる。

BBDOのワールドワイド・チーフ・クリエイティブ・オフィサーであるデイビッド・ルーバーズ氏は、「全世界的に、広告業界を取り巻く状況は変わってしまった。これまでの検証や評価方法の多くは廃れている。現在、もっとも説得力のある動画の検証実験は、オーディエンスが5秒後にエンゲージするかどうかだ。そこにこそ本当に学ぶべきものがあると思う」。

少ない時間で制作する効果

YouTubeおよびマース社とパートナーを組んだことにより、BBDOのクリエイティブチームはより集中して、コンペに取り組むことができた。制作時間が通常よりも大幅に短かったため、チーム全員が素早く効率的に多くの物事を決める必要があり、それに伴うさまざまなリスクにも対応していかなければならなかった。また、この動画制作によりBBDOとマース社、そしてYouTube3社のパートナーシップは強固なものとなったという。

マース社としても、これまでのマーケティング戦略を進化させる良い機会となったようだ。同社のグローバルCMOを務めるジェーン・ウェイクリー氏は、「BBDOとパートナーシップを組むことは、クリエイティブとイノベーションの面で、当社の世界的なキャンペーンを行うには最高の機会となった。我々は自由に発想することの力を学んだ。少ない時間のなかで、キャンペーンを観念化し、創造することでチームに活力が与えられ、推進力や作業ペースがクリエイティブな仕事に相乗効果をもたらすことを学んだ」と語る。

優勝したのはイギリスチーム

こうして制作された広告は、アメリカとイギリス、そしてオランダにて同時公開された。制作されたそれぞれの動画広告は、YouTubeのTrueviewフォーマットを活用した、ビュースルーレート(Googleが提供する動画広告フォーマットで、ユーザーが動画を30秒、もしくは最後まで見る割合)によって比較され、また、広告記憶についても視聴者のアンケートをとって評価されたという。制作されたすべての動画は、2015年10月の同じ日に同時公開され、公開されたそれぞれの国で100万インプレッションを超える結果をもたらした。

この動画キャンペーンの優勝チームは、BBDOのイギリスチームによって制作された「YouTube vs. YouTube」と題された動画となった。イギリスチームの動画コンテンツでは、left Twixとright Twix、それぞれの代弁者が行う自らのチョコレートバーのプレゼンに対して、早送りや音量の上げ下げなど、YouTubeの動画を模した機能を使って妨害するといった内容だ。2位にはBBDOのニューヨーク支部のチームが制作した「Minotaur(ミノタウロス)」が選ばれ、3位がCLM BBDOのフランス支部チームが制作した「Romans(ローマ人)」となった。


BBDOのイギリスチームによって制作された動画「YouTube vs. YouTube」

ユーチューバーの作り方を参考に

2013年以降、YouTubeはブランド企業に対して、ツール、データ、サービスやクリエイター向けのトレーニングなども提供している。ブランドが制作するテレビCM用広告の再配信をするのではなく、ユーザーが見てシェアしたいと思えるコンテンツ作りの手助けをすることが狙いだ。また、YouTubeは「Unskippable Labs(スキップできないラボ)」をローンチ。ユーザーが何を見ているのかを理解し、得た情報を今後のコンテンツ作りにどう生かせるかを知るための実験的なプロジェクトだ。

Googleのクリエイティブ・エージェンシー・パートナーシップ部長、サディ・ソマ氏は、「多くのYouTubeクリエイターたちは、クリエイティブかつ瞬発的に制作過程を経ることで、面白いコンテンツを作っている。なので、私たちは同じ要領をクリエイティブエージェンシーとともに実験的に行ったら面白くなるのではと思った。それぞれのチームが独自の観点で可笑しくもインスパイアされるようなコンテンツを作ってくれたことに感動した」と好評価を示した。

マース社は、今回のTwixチョコレートバーの実験的キャンペーンで学んだことを、Twix以外の商品のキャンペーンに有効的に活用したいと考えている。また、今回のキャンペーンで制作されたコンテンツの、別の使用方法も模索している。

Tanya Dua(原文 / 訳:BIG ROMAN)
Image from Twix YouTube video「YouTube vs. YouTube」