グローバルな原動力、豪州の広告クリエイティブ事情:「オージーはすべてを競技のように扱う」

本稿は、世界各国のさまざまな地域の広告事情のニュアンスを、当地の状況に精通した人の目を通して伝える「グローバル・クリエイティブ・シリーズ」である。

◆ ◆ ◆

大西洋と太平洋のはざまに位置するオーストラリアはグローバルな広告マーケットの原動力となっており、一流エージェンシーがこぞってメルボルン、シドニー、そしてパースなど各地にオフィスを構えている。いま、オーストラリアの広告クリエイティブがアツい。

「オーストラリアは、州同士や街同士など、さまざまなレベルで競い合う環境をもっている」と話したのはオーストラリアの広告代理店、ワイビン(Whybin)TBWAのデジタルクリエイティブ部門のディレクター、ラス・タッカー氏。「オーストラリアのクリエイティブ文化は、可能な限り、要求水準を高める傾向がある」。

たとえば、Y&Rニュージーランドがバーガーキング向けのキャンペーン、「マックワッパー」で2016年6月カンヌライオンズのメディア部門および印刷・出版部門でグランプリを受賞。一方で、メルボルンのマーケティングコミュニケーション会社、クレメンガー(Clemenger)BBDOによる等身大の彫刻「グラハム」は、トランスポート・アクシデント・コミッションの新しい道路安全キャンペーンの一環として採用された。

こうしたクリエィティブを追求する競争力は、オーストラリア国外に在住する多くのオージー(オーストラリア人)が、グローバルな業界のなかでも強い影響力をもつための土台になっていると、タッカー氏は考える。

その土台は、広告ネットワークのドロガ(Droga)5の創始者でクリエイティブ部門のチェアマンであるデビッド・ドロガ氏やデジタルエージェンシーのR/GAのバイスチェアマンでグローバルチーフクリエイティブのニック・ロー氏、またTBWAワールドワイドのCEOトロイ・ルハネン氏、そして広告代理店JWTのCCOマット・イーストウッド氏が証明しているだろう。

勝利への道はさておき、オーストラリアにおける広告を見渡すと、ほかにもユニークなものが存在する。

分別あるユーモアセンスが一般に浸透

「世界のほかの国々から見たら、我々の仕事は好き嫌いは別として、無作法または差別的に映るかもしれない」と話すのは、クレメンガー(Clemenger)BBDOメルボルンのCCOアント・キーオ氏。「上手くいったとき、そこには爽やかな率直さと分別あるユーモアセンスが生まれる。しかし、文化的な面で失敗してしまうと恥をかくことになる」。

例をあげれば、クリエイティブ・アド・エージェンシーのマッキャン(McCann)メルボルンは、モバイルゲーム用に「愚かな死に方(Dumb Ways to Die)」という動画を制作した。同ゲームは、プレイヤーが一連のバカバカしく危険なゲームをサバイブするために、自身のデバイスを傾けたり、タップして遊ぶ。制作された動画には死を回避する方法がいくつか紹介されている(たとえば、2日前のパイを食べてしまうと死んでしまうことがあるなど)。

「オーストラリア人らしさ」がうまくはたらく

オーストラリア人はだいたいどこへ行っても評判がよく、にぎやかで元気なことで知られている。オーストラリア人らしさとそのプライドを反映したキャンペーンは大抵うまくいく。「オーストラリア人らしさを本当の意味でもっていれば、オーディエンスを取り込むことができる。とりわけ、我々の多様性が反映されている場合はそうだ」と、国際的な広告代理店ハバス・ワールドワイド・オーストラリアのグループCEO、アンソニー・グレゴリオ氏は話した。

もっとも広く知られたキャンペーンは非営利団体、ウィ・ラブ・アワー・ラム(We Love Our Lamb:ラム肉大好き)が展開した、オーストラリア建国記念日にラム肉を食べることを推奨する「オペレーション・ブーメラン」だと、グレゴリオ氏は紹介する。動画では、より多くの国外居住オーストラリア人が建国記念日にできるだけラム肉を食べられるように陸軍が派遣されるというものだった。

ソーシャルにかける予算は今後増える

オーストラリアではテレビからソーシャルメディアへの移行が進んでいる。マーケターがテレビの広告費とプロダクションにかける予算をすべてソーシャルに移したら、効果は飛躍的に向上するだろう。なぜならソーシャルコンテンツは「適切なユーザーに、適切なタイミングで」メッセージを発信するための技術を、さまざまに提供できるからだと、デジタルエージェンシーであるアイソバー(Isobar)オーストラリアのクリエイティブディレクター、カルメラ・ソアーズ氏は語った。

「30秒のテレビスポットをただ放り込んで人々が観たあとに、そのコンテンツを忘れないでいてもらうことは期待できない。もちろん、いまだにニーチェのオーディエンスにはソーシャルネットワークを利用するよりテレビを観るほうが多いという人もいるが、その数は激減している」と、ソアーズ氏。

ハバスのグレゴリオ氏は、ブランドが自身のオーディエンスを理解すれば、ソーシャルの力は「巨大」なものとなると考える。たとえば、シドニーのオペラハウスは先ごろ、ソーシャルメディア主導のキャンペーン「#comeonin」を導入し、地元民や旅行者をこのランドマークの裏側探索に招待し、その体験をソーシャル上のハッシュタグでシェアした。

「オーストラリアのエージェンシーはいつも、キャンペーンに最高の機会を与えるべく、全方位を視野に入れたソリューションをとることを好む」と、ハバスのグレゴリオ氏はいった。「そうなると、このキャンペーンのようにテレビスポットや動画広告にソーシャルを活用するエージェンシーは、ますます増えていくことだろう。」

Yuyu Chen(原文 / 訳:Conyac