エージェンシーはプログラマティックをいかに統合すべきか?:WPPやIPGのスタイル

広告の自動化が急激に増えているなか、エージェンシーは他社に遅れを取らないように切磋琢磨している。当初、プログラマティックは個別の部門として扱われていたが、現在ではプログラマティックをすべてのメディア戦略に統合するエージェンシーが増えているのだ。

この問題に対し、親企業はさまざまな方法で解決を試みている。米広告企業IPGメディアブランズ(IPG Mediabrands)のプログラマティック部門であるキャデレオン(Cadreon)は、傘下となる個々のエージェンシーに対して、勉強会やトレーニングを実施しており、グループ内のインキュベーターとしての役割を担っている。

これは英広告企業WPPのメディアバイイングユニットであるグループエム(GroupM)も同様だ。同社では、「グループエムコネクト(GroupM Connect)」と呼ばれるサービスプラットフォームを使用し、リアルタイム入札などのデータや運営情報を取りまとめている。また、仏広告企業のピュブリシスグループ(Publicis Groupe)は2015年、プログラマティック部門であるヴィヴァキ(VivaKi)が運用していたアドトレーディングを、同グループが保有するエージェンシーそれぞれに担当させることにした。

現代のメディアエージェンシー

「メディア戦略、運営方法、データやトレーディングなど、さまざまなビジネスモデルやコミュニケーション方法を見ていくと、プログラマティックがひとつの事柄だけではないことがわかる」と、「グループエムコネクト」の最高経営責任者であるルード・ワンク氏は話す。「そういう意味では、プログラマティックはひとつの技術ではなく、現代のメディアエージェンシーを表すものだ」。

グループエムには4つのメディアバイイングエージェンシーが存在する。マインドシェア(Mindshare)、メディアコム(MediaCom)、MECとマクサス(Maxus)だ。これら4つのエージェンシーでプログラマティックを統一化させた結果、戦略面で競い合う必要が出てきた。広告オークションなどで入札する際、お互いを邪魔してはならないと、ワンク氏は言う。

「マクサスがマインドシェアとまったく異なる戦略を打ち立てても良い。しかし、テクノロジー、トレーディングデスクや運営に関わることは、すべてのエージェンシーが同じシステム、ツールと人材を使う」と、彼は説明している。

専門家はチームの一員

IPGメディアブランズにとって、プログラマティックの専門家はチームの一員だ。彼らはプログラマティックにのみ特化した能力を持っているが、プログラマティックとほかのマーケティングスタッフのあいだに線引きはまったくないと、メディア戦略企業マグナグローバル(Magna Global)の社長デイビッド・コーヘン氏は話す。

「数年前までは、デジタル、検索、モバイルと、それぞれが部門に分かれていて、部署内ですべての業務が完結していた。しかし現在では、部門の壁を超えて統合したチームが隣同士に座り、共同作業を行っている」と、コーヘン氏は語る。

多くの親企業の役員たちは、傘下にあるプログラマティック部門がツール、トレーニングや教育を提供していると強調して話す。だが、それらのプログラマティック部門は独自の企業名で別企業として存在しているのだ。

コーヘン氏は、このような構造は自然なものだと考えている。なぜなら、広告の売買を担当している人の考え方と役員の考え方は違うからだ。そして、プログラマティックのような新しく、専門知識が必要なものが登場すると、運営するにも専門家のチームが必要になるからだ。しかし、エージェンシーがプログラマティックに慣れてしまえば、この状況は変わるかもしれない。

「(企業のこのような構造は)独立性よりも、専門性を大事にしているからだ」と、コーヘン氏は指摘する。「プログラマティックはこれから、できて当たり前の能力になる。2、3年後には、プログラマティックという言葉の意味はなくなってしまうことだろう」。

疑いの目を向ける者たち

当然、このような大企業の動きに疑いの目を向ける者たちもいる。大企業による絶え間ないチームの再編成などにより、チームの結束力が育たないと指摘しているのだ。

「親企業には、内部を刷新させようという革新的な考え方がまったくない」と、アドエージェンシーのトラクション(Traction)共同設立者であり最高経営責任者のアダム・クラインバーグ氏は話す。「プログラマティック企業を買収し、別企業として運営することもできるが、それでは統合にはならない。また、部署間の連携を行っていないサイロ化された部門も、いまだに多く存在する」。

Yuyu Chen(原文 / 訳:BIG ROMAN)
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