モバイルはすでにアジアの基盤:「アドバタイジングウィーク」レポート#3

広告の祭典「アドバタイジングウィークアジア」の4日目。一昨日昨日に続き、DIGIDAY[日本版]では、イベントのダイジェストをお伝えする。4日目はアジアがモバイルの時代を迎えていることを改めて知る機会になった。

FB:スマホ消費時間はグローバルの1.5倍

Facebookアジア太平洋担当バイスプレジデントのダン・ニアリー氏は、「世界はすでにモバイルになっている」ことを強調した。同社のメッセージングアプリである「メッセンジャー」と「ワッツアップ(WhatApp)」では、1日あたり約600億回の交信があると説明。SMS(ショートメッセージサービス)のピークが1日あたり200億回のため、約3倍の規模になる。10年間をめどに世界中のインターネットに「未接続」の人々を、接続された状態にすること(コネクティビティ)が目標になるという。

「世界には75億のアクティブなSIMカードが存在する。興味深いことに世界人口73億人よりも多い。日本を含む100カ国で人口より多い数のモバイルデバイスが使用されている」。Facebookに関しても、月間アクティブユーザーの96%がモバイルで利用されている(「モバイルとデスクトップの併用者」を含むと見られる)。

スマートフォンの消費時間では、日本は海外平均の1.5倍に上るという。メディア消費と広告費にはねじれ現象が起きているようだ。また、クッキーはモバイルにおいて効果的ではないと指摘。モバイルでの情報接触ではモバイルアプリが主役になっている。生活者にはクロスデバイス利用、高い頻度の接触傾向などの傾向が見られるというモバイル時代のデジタル広告の新しい課題に触れた。

資生堂:1000億増額でブランドリフト

資生堂社長、魚谷雅彦氏は、最高マーケティング責任者(CMO)を置いている日系企業は、全体の10%以下にすぎないことを指摘。顧客のための価値を創造するため戦略的マーケティングを行う、と話した。魚谷氏は世界中の販売店で約4000人と会い、消費材メーカーが陥りがちな悪いサイクルが生じていることに気がついたという。投資がなく、ブランド力が弱まり、在庫が増え、マーケティング予算が削られるという循環だ。

このサイクルを打破するため、世界6地域にそれぞれトップを置き、権限を渡した。「海外企業で一般的だが、日系企業があまり好まない方法だ。ときにマイクロマネージメントに陥ることもある」。ブランド価値を引き上げるため、3年間でマーケティング予算を1000億円増やした。

Google:モバイルシフトではなく、すでに基盤

「あらゆる統計が、アジアが世界経済の中心地になりつつあることを示し、企業の研究開発もこの地域に注がれている」と、Googleアジア太平洋オペレーション・バイスプレジデントのカリム・テンサマニ氏(TOP画像)は語った。グローバルの消費時間ベースでは、モバイルがテレビの2倍程度のパイがあるという。iモードなどで独自の進化を遂げていた日本ではモバイルファーストが2000年代に達成され、韓国の80%がYouTubeをモバイルで視聴する。インドでは2013年に検索利用でモバイルがメインになったと分析。

「モバイルはこの地域の基盤として機能しており、それがもたらす状況に向き合っている」と訴えた。いつでも情報接触の機会があるモバイル時代には、テレビ業界の「プライムタイム(ゴールデンタイム)」は存在せず、生活者の意図が豊かになる瞬間である「マイクロモーメント」が重要だという。

先月の開発者カンファレンスで発表された、ウェブアプリとネイティブアプリの双方を兼ねることのできる「プログレッシブ・ウェブ・アップ(Progressive Web App)」を紹介。日本の大手広告・メディア企業の事例を紹介した。モバイルウェブとモバイルアプリ間で、ユーザー行動のトラッキングが分断してしまう問題への対応策になると見られる。

日本ではECのコンバージョンの52%がモバイルで行われており、西欧諸国を大きく上回っているという。「インド、インドネシア、日本のようなアジア諸国は、新しいモバイルのアプローチを創り出す時期だ」と締めくくった。

フジテレビ:世界に出なくてはいけない

シンガポール拠点の広告代理店クルーナー(CROONER)の宮野治彦CEOは、日本のテレビ番組は海外に活躍の場を広げ、アジアを中心に世界で楽しまれているが、コンテンツのグローバル化については、米国、韓国、中国、インドがリードしている。かつては日本のコンテンツがアジアを席巻する時期があったが、現在は日本が追いつく番だという。アニメはひとりでに人気が出て、音楽、物販のような周辺産業がくっつく相乗効果も生まれている。最近は中国の日本コンテンツへの投資が活発で、中国とのビジネスに期待できると語った。

フジテレビジョン国際開発局事業開発部副部長、久保田哲史氏は現状は日本のテレビ局での事業が収益性が高く、韓国のように「世界に出なくてはいけない」という強いインセンティブが働いているわけではないが、政府の支援がついているあいだに、なんとか海外でのマネタイズを確立しなくてはいけない、と語っている。

講談社:マンガ誌をユーチューバーで復活

「ボンボンTV」は、創業80年に迫ろうという老舗講談社が、休刊した少年マンガ誌「ボンボン」をユーチューバーを起用したYouTubeチャンネルで復活させた例だ。スマホネイティブに対して、紙のメディアが届かないことを痛感した、講談社「ボンボンTV」編集チーム長の安永尚人氏は、「なぜ出版社がYouTubeチャンネルをやるのか。10代にリーチするのは動画だ。もう勝つ方法を採るしかない、となった」と語った。マンガ単行本『トモダチゲーム』『リアルアカウント』のプロモーションに、人気ユーチューバー「はじめしゃちょー」らを起用し、実写版YouTube動画を配信。売上に大きな効果が出たという。ネットではノーリスクでテストマーケティングができるので、それをリアルに落としこめると目論む。

はじめしゃちょー、ヒカキンら人気ユーチューバーを抱える芸能事務所「uuum(ウーム)」の代表取締役・鎌田和樹氏は、10代のスマホネイティブのメディア接触態度が、上の世代と大きく異ることを指摘。テレビの15分未満視聴をし、テレビ画面をタップするほどスマホファーストな世代は、テレビよりネット動画が面白いと考える層が一定割合いる。親しみやすく、手づくり感のある、インフルエンサーを起用した動画は10代の情報消費スタイルにマッチしており、深いエンゲージメントを得られると主張した。

マッキャン:スマホネイティブは新しい種

マッキャン・ワールドグループ、アジアパシフィックのチーフデジタルオフィサー、パトリック・ロナ氏らによるセッションでは、アジアのミレニアル世代とのエンゲージ方法を検討した。どんな仕事をしたいかと聞かれると「一日中動画ストリーミングしていたい」と答える若者たち。インターネットとモバイルを当たり前として成長してきた世代は、映像スキルと記憶能力が発達した「スーパースピーシーズ(新しい種)」と訴えた。若者にとってモバイルは通話のために存在しておらず、自分で自分の写真にタグ付けし、ハッシュタグを多用し、自分の写真の過剰編集を嫌う。ロナ氏は「ミレニアル世代のモバイル行動は圧倒的」と指摘した。

Written,Photo by 吉田拓史