リアルマッドメン曰く「'72年に藤田田氏とキャラを練った」:「アドバタイジングウィーク」レポート#2

広告の祭典「アドバタイジングウィークアジア」の3日目。昨日に続き、DIGIDAY[日本版]では、イベントのダイジェストをお伝えする。本日はスポーツ庁初代長官の鈴木大地氏が東京オリンピックを視野に入れ、スポーツビジネスの発展を求め、オムニコム創業者であり、世界最古参とも呼ぶべき「レジェンド」が会場をわかせた。

スポーツビジネスはプロと手を組んで

東京オリンピックは広告業界の大きなイベントになる。スポーツビジネスをより経営のプロとスポーツ界が融合したものにする試みも重要だ。鈴木大地氏は「スタジアムとアリーナを改築し、収益を生む場所にする。スポーツのビジネス化だ。スポーツ上がりの人がすべてを決めていくのではなく、ビジネスパーソンに参画してもらうことが、成長の鍵になる」と語った。

「米スーパーボウルを視察したときは、1日の試合に最高の放送体制が整えられていること、30秒のコマーシャルに数億円の値がついていることに驚いた。いままでスポーツに関心のなかった人たちに関心をもってもらうためにメディアの果たす役割が大事だ」。

オムニコム創業者:広告のレジェンド来日

広告ホールディングス世界2位、オムニコムの創業者でDDBワールドワイド会長のキース・ラインハルト氏が登壇した。ラインハルト氏は第2次世界大戦以降の米国の経済成長時に、ニューヨークのマディソン街に広告代理店が雨後の筍のように現れ、軒を連ねた時代から広告業界に関わる伝説的人物だ。当時の業界の様子を描いた米ドラマ「マッドメン」が人気を博した後、本物のマディソン街の広告マンを経験した人物として「リアルマッドメン」の愛称がつけられている。

ラインハルト氏がコピーライターとして広告業界に入る経緯から、巨大広告会社オムニコムが生まれるまでを語った。1972年に初来日。日本マクドナルド創業者、藤田田氏とともにブランドキャラクター「ドナルド・マクドナルド」を日本に紹介するキャンペーンを検討した逸話を披露した。

インプレッションの質を証明できるか

広告ホールディングス世界1位WPPのスコット・スピリット氏とWPP系デジタルメディアエージェンシーのエッセンス(Essence)アジア太平洋地域最高経営責任者(CEO)である松下恭子氏が、デジタル広告の世界と日本の状況について議論。スピリット氏は日本ではテレビCMからデジタル広告へのシフトが他国に比べて緩やかであることを指摘。デジタルには多様なプラットフォームが形成されており、広告費の「ウイナーテイクオール(勝者総取り)」にはならないと予想する。デジタル側がファーストスクリーンになることは見込まれるが、テレビは認知獲得の手段として残ると語った。

松下氏はカスタマージャニーの最初から最後までを計測できることがプログラマティック広告の強みと説明する。CPM(インプレッション単価)だけでは、ブランドがオーディエンスに与えたインパクトを表せないと認め、CPMの質が重要になると語った。ビューアービリティ(視認可能性)測定企業が提供する指標により「その広告が見えた状態で、人々がどのくらいの時間を使ったのか」わかるようになると指摘。このような取引通貨の確立にはブランド、媒体社、代理店の協働が必要だと説いた。

スピリット氏は「広告主がプログラマティック広告のうち、無駄になっている部分を知りたい」という要望にはビューアビリティなどをめぐる透明性の確保が重要だ、と話した。「日本にいる外国人は日本の仕組みをうまく理解していない、というのはわかっている。だが少しずつ広告業界のことを理解しはじめた。米国の代理店の一部は、プライベート・エクイティ・ファンドが経営入りするという悪夢をみている。代理店にもっとデジタル広告を打つよう訴えてみたほうがいい」。

ますます重要になる位置情報

Googleの社内スタートアップであり、独立したナイアンティック(Niantic)。提供する位置情報ゲーム「Ingress(イングレス)」は世界中で多数のユーザー数を誇る。Ingressは位置情報と現実の地理を利用した「陣取りゲーム」のため、ユーザーの豊富な位置情報が手に入ることがマーケティング面で大きい。また、ユーザーは熱狂的なため、ブランドとのエンゲージメントを作るのにも適しているかもしれない。

ナイアンティック日本法人代表取締役の村井説人氏は、コンビニエンスストアの事例を挙げた。リアル店舗は商圏が限られていることと、すべてのブランドの認知率が99%に達し、他社がしていない設備投資をしたとしても、すぐさま追随されるように、差別化が難しい点を指摘。イングレス内に特定のコンビニエンスストアを組み込むことで、ユーザーを誘導することができた、と語った。特定のセグメントに対し、深いエンゲージメントが得られ、拡張現実(AR)を通したリアル店舗への集客という、O2O(オフライン・ツー・オンライン) 施策を打てることを強調した。

アジア、人工知能、データ

アジア太平洋のエグゼクティブが、市場の状況・トレンドについて意見を交わした。LinkedIn(リンクトイン)東南・北アジア担当マーケティングソリューションダイレクター、アサッフ・タルノポルスキー氏は使用デバイス構成、プラットフォームが国・地域でバラバラなため、キャンペーンは異なるアプローチが必要になると指摘。プラットフォーム横断でウケるクリエイティブや、アジアで強まるモバイルファーストへの対応が必要だ、と語った。

バイドゥ(百度)ジャパンCEOのチャールズ・ツァン氏は、2015年5月に買収したコンテンツレコメンデーションのpopIn(ポップイン)による調査で、動画視聴の8割が画面を倒さずタテのまま視聴されていることが分かったと言及。同社は2014年にスタンフォード大学教授で、人工知能分野の権威である中華系米国人アンドリュー・イング氏を所長にし、人工知能研究機関「シリコンバレーAIラボ」を立ち上げている。「Googleが2週間前の開発者カンファレンスでアシスタントボットを発表したが、我々は昨年9月の段階でアシスタント『度秘』発表している。AI、機械学習はもはやコンセプトではない。バイドゥ、Google、Facebookが競い合う領域だ」。

ブルームバーグアジア太平洋メディアセールス責任者のマーク・フルード氏は、データをオーディエンスに届けるためインフォグラフィックのようなメディア表現が考えられると語った。データの活用が爆発的に拡大するにつれて、「データセキュリティ」と呼ぶべきビジネスが拡大すると予見する。

コンテンツが適切な場所に届けられるには

フライシュマン・ヒラード・ジャパン・シニアバイスプレジデント&パートナー、馬渕邦美氏はスマートフォンを利用していると知らず知らずのうちに広告接触が1日4000〜5000件に上っているとし、広告を弾くブラウザもあるなか、コンテンツマーケテイングの重要性は増していると話した。「日本企業がグローバル展開する際、日本でうまく行った方法をそのまま採用したがるが、その国の状況に合わせたほうがいい」。

BuzzFeed Japan代表取締役社長、上野正博氏はこの1年動画の伸びが急速だったとし、その背景はスマートフォンの普及があるという。BuzzFeedのオーディエンス構成は「米国だとオーディエンスは18―34歳(ミレニアル世代)が68%、女性は70%」という。海外コンテンツを翻訳するとシェアされるときとそうでないときに分かれるが、日本のジャーナリストによるコンテンツの比率を高めているという。日本はクールという印象をもたれているため、海外ブランチでも日本発コンテンツは一定の需要があるという。

Taboola(タブーラ)アジア太平洋地域最高責任者のラン・バック氏は「素晴らしいコンテンツをつくった後、それを適切な相手に届けることが重要だ。興味関心は一人ひとり異なる。スマートフォンでネットをする割合は拡大しており、どうやってそのパーソナルなデバイスをもつ個人の興味に合ったコンテンツをディストリビュートするかが重要だ。その鍵はデータだ」と指摘。

Written by 吉田拓史
Image via advertising week