Facebookの水増し計測、憤る「広告主」側はどう動くか?

Facebookが動画の平均視聴時間を誤って過大に算出していた問題を受けて広告主側は、Facebookのプラットフォームをより多くのサードパーティー測定プロバイダーに開放することを迫る、交渉の材料として利用していくだろう。

実際に、その動きはすでにはじまっている。全米広告主協会(以下ANA)のボブ・リオダイス最高経営責任者(CEO)は9月30日、Facebookに対してメディア評価評議会(以下MRC)による指標の監査と認定を呼びかけるブログ記事を投稿した。

リオダイスCEOはそのなかで、これらはデジタル広告の広告主にとって「テーブルステークス」(注:ポーカーでゲーム開始時にテーブル上にあるだけの金額しか賭けられないというルール)だと表現。「メディア企業が認定と監査の基準に従うべきではない実際的な理由はないとANAは考えている」と、意思表明した。

実際、どの程度の問題なのか

Facebookが間違ったのは、プラットフォーム上の動画広告の平均視聴時間の算出方法だ。動画広告における、すべての視聴時間に対する再生回数ではなく、3秒以上視聴された再生回数のみを算出対象としていたため、結果的に数値の水増しに繋がった(平均視聴時間が多く算出されるため)。

広告代理店グループM(Group M)は、全世界の広告支出の3分の1に、この問題は関与していると抗議する。「(Facebookの間違いによって)サードパーティーによる全メディアの検証、つまり、取引条件の検証だけではなく、パフォーマンスの検証の重要性と必要性がいっそう強まった」。

Facebookに気を遣って、今回匿名を条件に語ってくれた複数のエージェンシー幹部によると、クライアントからはFacebookの失態は実際にはどの程度の問題なのか、問い合わせが来ているという。間違い自体は大した問題ではないが、Facebookとの会議のたびにもち出されることになるだろうと、多くのエージェンシー幹部が内々に語っている。

というのも、Facebookがどのメディア企業よりも広告業界に影響力を持っていることは、おそらく間違いないからだ。かつては、すべてに対する影響力を持っていた広告主は、いまや依頼者として不快な思いをしている。

広告支出に影響はない

この問題がややこしいのは、動画の平均視聴時間はFacebook上で支払いの請求にかかわる指標ではないため、広告支出に影響はない点だ。キャンペーンの費用は通常、完全再生数あたりのコストや10秒再生数あたりのコストなどの指標に基づいて支払われる。

複数のエージェンシー幹部によると、Facebookの失態が問題になる可能性があるとすれば、ブランドが動画投資の大まかな判断をFacebook上の視聴時間に基づいて行っていた場合だという。あるエージェンシーのCEOは、視聴時間を予算配分の判断の主要指標にしている広告主は20%もいないと推測する。

このエージェンシーCEOは、「我々への請求が間違っていたわけではない。問題になるのは、クライアントが(視聴時間の)情報に基づいて判断をしている場合だ」と語った。

サードパーティーの必要性

「アドバタイジングウィーク」でFacebookのミスが話題になったのは確かで、Facebook以外のプラットフォームまでもが、測定のさらなる開示と透明化の必要性について追求されていた。Snapchat(スナップチャット)とTwitterは、どちらも時間をかけて、さまざまなサードパーティーのデータベンダーとの提携をアピールしていたのも印象深い

もちろん、Facebookはすでに、モート(Moat)、コムスコア(comScore)、ニールセン(Nielsen)、インテグラル・アド・サイエンス(Integral Ad Science)といった一部のサードパーティー測定ベンダーに門戸を開いている。広告主側が求めているのはそれだけではなく、FacebookがGoogleと並ぶデジタル広告の2大プレイヤーのひとつであることから得ている支配権の一部を手放すことだ。なにしろ、Facebookは第2四半期だけで62億ドル(約6440億円)のデジタル広告売上を得ている。

Facebookは、「どのような形で協力を深めることができるかについて、現在ANAと話し合っている。パートナーとの信頼と透明性は当社にとって最優先事項だ。我々は常にクライアントの業績向上に注力してきたし、サードパーティーの検証の必要性を強く感じている」という声明を発表した。

エージェンシーの思惑

前述のエージェンシーCEOは、「Facebookは守勢だ。ここが重要な分岐点だと私は見ており、これを利用してFacebookにMRCの証明書を採用させなければならない」と語った。一方で、動画の視聴時間は実際には取引交渉で指標としてほとんど問題にされていなかったと指摘する、エージェンシー幹部も複数いる。空騒ぎにすぎないというのだ。

あるエージェンシーCEOは、「大手エージェンシーは、この問題を利用したくて仕方がないということだ。彼らは、Facebookの上手に出るためにはなんでもするだろう」と指摘する。

「彼らがサードパーティーの測定を要求するのは、サードパーティーのシステムを自分たちの手数料に組み込めると、それだけ請求できる金額が増えるからだ。『モートを追加したから、これまでの5%ではなく6%いただく』ことができる」。

「何かが大きく変わることはない」

今回のFacebookの失態が、巨大ソーシャル企業である同社の事業の進め方を抜本的に変えるようなものではないという点では、結局すべてのエージェンシー幹部が同じ意見だった。

「マーケターに対してGoogleも、まったく同じような状態であり、こうしたことはずっと続いている」と、あるエージェンシーの幹部は語る。「とにかくこの2社に対しては干渉ができない。サードパーティーの測定ベンダーを増やすだろうが、それはPR目的や後々のためにすでにやってきたことだ。それ自体はまったくけっこうなことだが、それで何かが大きく変わることはない」。

メディアバイイングのベテランであるこの幹部は、「我々が欲しいのはもっと大きな問題だ」と言葉を続けた。「もしインプレッションの総数を偽っているとしたら、話は別だ。しかし今回は、何かを動かすほどの大きな間違いではない」。

Sahil Patel (原文 / 訳:ガリレオ)