アドビ、テレビ事業者へのOTT配信サービスを強化:動画ビジネスの収益化を後押しか

アドビシステムズは2016年4月11日、テレビ局や有料テレビサービスプロバイダー業界向けの動画配信製品「Adobe Primetime(アドビ・プライムタイム)」を日本市場で本格展開を開始したと発表した。テレビ事業者がデジタル領域でコンテンツを配信する動きは加速している。Primetimeはデジタル動画配信・収益化環境の構築をワンパッケージで提供するが、これらはテレビ事業者にとり技術的なハードルがあり、一定の需要が見込まれる。

Primetimeのような製品により、テレビ事業者は独自のビデオ・オンデマンドを展開できるようになり、広告などの方法で収益化を狙える。Primetimeは2013年に米国でリリースされ、現在米ケーブルテレビ最大手コムキャスト、その傘下のNBCスポーツ、米メジャーリーグの動画メディアなどが導入。テレビ事業者やコンテンツホルダーがデジタル動画配信を展開するためのインフラになる。

OTT(オーバー・ザ・トップ)と呼ばれ、従来のインフラに頼らない、インターネットによるコンテンツ配信を指す。従来は電波、ケーブル網、衛星などがなければ、コンテンツを配信できなかったが、ネットの高速化、デバイスの高機能化により、YouTubeのような動画サイトからNetflix、Amazonプライム・ビデオのような定額制サービスまでが生まれている。

PrimetimeはOTTを運営したいテレビ事業者などにPC、スマートフォン、 タブレット、ゲームコンソールなどあらゆる視聴デバイスに対して、著作権管理されたテレビ番組や映画などを配信できるようにする。同時に、スムーズな動画広告挿入・管理を行うことができるようにもする。

米国ではテレビ事業者のほか、ハリウッドの映画会社などのコンテンツホルダーもNetflixなどの配信サービスにコンテンツを売るだけでなく、独自のOTT配信を築く方向にシフト。これらには、この数年で進んだデバイスのフラグメンテーション(断片化)が大きく関与している。テレビコンテンツの視聴はテレビ受像機以外にも、さまざまなデジタルデバイスでされるからだ。

アドビはPrimetimeをYouTubeのような動画プラットフォームや、ブライトコーブのようなクラウドベースの動画配信サービスとは異なる「ハイエンド」と定義。既存の放送・配信インフラとの統合や、製品のカスタマイズ、大規模配信をカバーするとしており、大手のテレビ事業者、コンテンツホルダーを顧客に想定していることが伺える。

米テレビ事業者にとっては今年のリオ五輪が大きな山場になりそうだ。巨額の広告費が飛び交う五輪で、OTT視聴を提供・測定できれば、収益機会が拡大するからだ。Primetime担当バイスプレジデントのジェレミー・ヘルファンド氏は記者会見で「テレビはもはやデバイスではない。コンテンツのことを指す概念だ。これが3500億ドル(約39兆円)産業に変化を促している」と指摘している。

今回追加された主な新機能
・SDK(ソフトウェア・ディベロップメント・キット)がHTML5
・ビデオロジーと共同開発した動画広告プラットフォーム
・アドビマーケティングクラウドと連携により分析・測定などの機能
・動画コンテンツレコメンデーション

放送局や有料テレビサービスプロバイダーには、ユーザーの使用するデバイスに適した動画視聴体験の提供が求められる。この実現にはデバイス毎に異なる仕様、形式を組み合わせた動画ファイルを用意する必要があり、配信コストの増大とシステムの複雑化が課題となっていた。アドビは PrimetimeはDRMと配信形式を統一することでコストを抑えることができるとし、HTML5の採用により新たなデバイスへの迅速な対応が可能になるとしている。

木ノ本副社長は日本のエコシステムに合わせた提携を結んで、Primetimeを提供すると明らかにしている。提携先は以下のとおり。導入事例には、日本国外にアニメコンテンツのストリーミングサービスを提供するアニメコンソーシアムジャパンがある。

PrimeTime提携先
カタリナ:システムインテグレーション
コムスコア:クロスデバイス測定
ビデオロジー:動画広告配信プラットフォーム
サイバー・コミュニケーションズ:広告主との動画広告配信ワークフローの確立
Jストリーム:動画ストリーミング基盤、DRM、ライブ動画広告挿入

テレビ朝日とサイバーエージェントの広告型動画配信サービス「Abema TV」が同じ11日に発表された。今後もテレビ局が単体か提携により、OTT事業を開始するケースが出てくるだろう。これに伴う技術面の支援には事業機会が認められるため、同様のサービス提供を試みるベンダーもいるかもしれない。

*訂正:Primetimeの「t」の表記を大文字から小文字に訂正しました(3/14吉田)

Written by 吉田拓史
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